年間100億円規模の収益獲得目指す
JR東日本は3月4日、新幹線や在来線の旅客鉄道を活用した高速・多量荷物輸送を事業化すると発表した。
輸送の定時性やスピードが評価され、医薬品や精密機器などの輸送需要が伸びているため、これまで以上に注力することにした。
東北や上越など全ての新幹線で展開している駅間の小口輸送「はこビュン」や「はこビュンQuick」を着実に伸ばしていくとともに、在来線を含めたネットワークの強化と受付・予約のシステム化を進め、JR東日本グループ全体で年間100億円規模の収益獲得を目指す。
その一環として、4月18日から新青森~東京間で客室を使用した車両貸輸送を開始するほか、E3系新幹線1編成の全号車を荷物輸送専用車両として改造。今秋には車両基地を活用した盛岡~東京間の輸送を開始する予定。
営業列車の客室や荷物輸送専用車両を活用した大口荷物の定期輸送サービスを開始し、順次ネットワークの拡大を図り、荷物輸送ニーズに合致した新たな物流サービスも開発する。
輸送対象は北海道・東北・秋田・山形・上越・北陸の各新幹線、在来線特急と在来線。1箱単位の小口から大口輸送までカバーする。今回は東北新幹線の100箱単位事業化に着手する。
はこビュンの基本輸送料金(税込み)。1箱は3辺合計120㎝程度を想定。ファーストマイル・ラストマイル分は含まない。大口・車両貸はE5系新幹線1号車を利用の場合。大口・車両貸は4月18日からの大口定期運行サービスの想定
はこビュンQuickの法人・個人向け輸送料金(税込み)。事前予約不要で、直接駅カウンターに持ち込む
これまでの商談や電話・メールなどによる輸送列車の予約・受付から、今後、法人向けは4月から、個人向けは2025年度内にそれぞれ「JRE MALL」の予約システムを活用できるようにし、利便性を向上させる。事業運営主体のJR東日本物流をオペレーションの軸として、予約受付から荷物の積み下ろし、他の物流企業へのファースト・ラストワンマイル輸送委託まで包括的に調整、円滑にサービス展開する。
輸送実績
社会問題を解決(営業用貨物車と鉄道貨物の比較)
これまでは主に始発終着駅間かつ列車限定で輸送していたが、今後は途中駅での取り扱いも含め新幹線全列車に対象を拡大。大口輸送に関しては東北エリアから首都圏へ土休日を除く毎日輸送する。秋田・山形・上越新幹線など各方面と、特急電車などを含めて「はこビュン」ネットワークを拡大する。
(1)新幹線荷物輸送の大口定期運行サービス (東北新幹線 新青森駅・東京駅間 2025年春開始)
2024年度の多量輸送事業化検証結果等を踏まえ、現行の数箱から10箱単位の輸送サービスから、より多量かつ定期的な輸送サービスを始める。将来は上越新幹線ほか対象線区・区間の拡大を図る。
運行日:毎週金曜日の定期運行を開始(4月18日~)
※輸送日の7営業日前まで申し込み可能。金曜日以外の輸送にも今後柔軟に対応
輸送列車:東北新幹線 臨時列車 はやぶさ50号(E5系10両編成)
輸送区間:新青森駅8:29発 → 東京駅11:44着
輸送形態:荷物輸送:1~2号車、旅客発売:3~10号車
(普通車指定席:3~8号車、グリーン車:9号車、グランクラス:10号車、TRAIN DESK設定あり)
荷量:最大200箱程度
輸送イメージ
(2)定期運行化に向けた車両改造等(東北新幹線 盛岡・東京間 2025年秋開始予定)
E3系新幹線1編成の全号車を荷物輸送専用車両として改造(床面フラット化)。25年秋の東北新幹線盛岡・東京間上り列車での平日定期運行を皮切りに、車両基地を生かした100箱単位、最大で1000箱程度のさらなる大口輸送を定期化する。
運行時はE5系「やまびこ」と連結する予定。正午前に盛岡新幹線車両センターを発車、午後に東京新幹線車両センターに到着するダイヤを検討中です。
E3系新幹線改造車両のイメージ
はこビュンネットワークとこれまでのトライアル実績など
JR東グループは2024年2月、日本郵政グループと「社会課題の解決に向けた連協強化」に関する協定を締結。その一環で持続可能な物流の実現を掲げ、両社で「物流のリ・デザイン」の実現に向けて検討を進めている。今回の取り組みについても、両社間で連携を強化する。
ネットワークの拡大による新たなライフスタイル(イメージ)
(藤原秀行)※いずれもJR東日本提供