輸送効率の改善など期待可能と成果説明
アダストリア、バロックジャパンリミテッド、TSIホールディングス、ユナイテッドアローズの国内アパレル主要4社は8月21日、共同で2023年10月に立ち上げた「アパレル物流研究会」の活動の概要を公表した。
研究会は各社の課題共有と議論を通じ、業界として共通の物流課題を明確にした上で、業界のロジスティクス効率化とサステナビリティ強化を図るのが狙い。
「物流2024年問題」や、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)の超高齢化社会を迎えることで労働力不足や社会保障費用の増大などが見込まれる「2025年問題」は、ファッション業界にもコスト上昇、輸配送日数の長期化など、事業に対して深刻な影響を及ぼすと見込まれる。
同業界は共同の物流改善の具体的な成功例がまだ少なく、アパレルという商材の特性上、生産・仕入れから販売までの流通経路が多岐にわたることに加え、ファッション業界は中小規模の事業者が多数を占め、輸配送は物流会社への依存度が高く、各社単体での改善やリスクコントロールには限界があるのが課題だった。そうした状況を打開するため、研究会設置にこぎ着けた。
これまでに国内の店舗向け共同配送や、ECモール向け共同配送、海外からの調達領域における共同輸送など、さまざまなPoC(概念実証)を展開している。
今年6月に始めたECモール向け共同配送の概要(いずれも4社提供)
4社は複数のPoCを通じて、一般的に共同輸配送における課題となっている集荷・配送の時間調整やトラック・コンテナの積載率確保について、出荷元(各社物流拠点)や配送先(各社出店施設・物流拠点)ごとの荷量を十分に確保することで、輸送効率の改善が期待できることが分かったと指摘。物流拠点の地域、商材の種類、納品形態といった共通のニーズを持つ企業が集まることで、新しいルートやメニューを開拓する可能性が広がるとの見方を示した。
場合によっては、より上流(海外調達の場合は生産地)から合流するメリットも見えてきたと説明、視野を広げていくとさまざまな可能性と多くの選択肢があることも判明したとみている。
今後は他のメーカーにも参加を呼び掛けていく構え。
(藤原秀行)