三菱商事が洋上風力発電事業から撤退発表、海運業界にも影響★続報

三菱商事が洋上風力発電事業から撤退発表、海運業界にも影響★続報

資材価格や工事費高騰で採算悪化、「安値受注」あだに

三菱商事は8月27日、グループで進めてきた洋上風力発電設備の開発から撤退すると発表した。

三菱商事グループは中部電力グループと組み、政府が2021年に公募した千葉県銚子市、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、同県由利本荘市沖の3海域を対象とする洋上風力発電事業を全て落札。28年以降の完成を目指していた。



発電規模は3海域の合計で約170万kwを想定していた。しかし、資材価格や工事費の急騰、資金調達時の金利上昇などで採算が当初想定より悪化する見通しとなっているため、方針を転換した。

入札の際、政府や他の企業よりも大幅に安い売電価格を提示して案件を全て獲得したことがあだとなった。競合他社の間では入札直後から実現性に疑問の声が噴出していた。

三菱商事は同日、「当社として取り得る様々な手段・可能性を追求しながら事業性の再評価に取り組んできたが、事業パートナー間で協議を行った結果、実行可能な事業計画を立てることは困難であるとの結論に至った」とのコメントを発表した。

政府は脱炭素化の一環として、洋上風力発電の普及に本腰を入れているが、有力な担い手のはずだった三菱商事が撤退を強いられたことで、エネルギー戦略の抜本的な見直しを迫られる可能性が出てきた。3海域の建設案件は再入札となる公算が大きい。

洋上風力発電設備に関しては、海運業界も建設資材や作業員の輸送などで需要が見込めるとして対応を進めているが、事業の戦略に影響を受けそうだ。

三菱商事は2025年3月期に洋上風力発電事業で約520億円の特別損失を計上し、3海域の案件について採算性を見直す考えを表明していた。



(藤原秀行)

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