統合報告書で紹介、サプライチェーン全体改革の収益寄与は38億円見込む
三洋化成工業は9月19日、2025年のグループ統合報告書を公表した。
この中で、サプライチェーン全体の改革に関する進捗状況などを説明。2025年度にサプライチェーン全体の改革が寄与する収益が、目標の30億円を上回る約38億円を見込める状況になっていることに言及したほか、在庫適正化によるキャッシュフロー改善も約20億円に上っていると成果を強調した。
受注・需給計画の面では、在庫回転月数(6カ月の移動平均)を22年度の2.0カ月から24年度は1.8カ月まで短縮。業務効率化の面でもEDI(電子データ交換)とRPA(パソコンを使った事務作業自動化技術)を導入したことで、受注件数に対する手入力の割合は22年度の38%から24年度は10%近くまで下げられ、大幅なリソースシフトが可能になったという。
これまで営業担当者が手掛けてきたデリバリー調整業務を受注担当者が代行することで、営業部門では1人当たり1日1時間以上の余裕が生まれ、顧客への対応が迅速化するなどの効果を生み出した。
在庫の適正化を目指し、過剰生産・欠品に関する自動アラート発報システムや在庫適正化ツールなどを採用したことで、庫情報を一括して効率的に管理できるよう改善。その結果として、長期在庫に顕著な減少傾向が見られ、24年度末までの2年間累計でキャッシュフロー約20億円の改善を実現できたと解説している。
「今後は製品ごとの適正在庫水準を在庫適正化ツールに設定し、生産量を自動提案させるほか、生産計画の立案方法を統一し属人化を解消させるとともに過剰在庫や欠品を防ぐ」と明言している。
調達では、新たな指標として海外品導入比率を設定することで原料コスト改善を進め、24年度末までの2年間で累計約22億円のコスト削減を達成したという。
並行して、基幹業務システムに蓄積しているデータを使い、天災・事故などの有事発生時の影響把握や最適物流経路の構築をスピーディーに行うためのデータベースを作成。選択した地域のサプライヤーや原料の情報、ひも付いている製品の情報を抽出できるようにした。サプライチェーン途絶リスクの極小化や物流におけるCO2排出量の削減に寄与できるとみている。
生産では従来、多数の容器規格が存在し、各組み合わせで非常に複雑な在庫管理を行っていたため、在庫に無駄が生じていた。改善に向け、容器・荷姿の統合を進めており、22年度末時点で686種類だった容器を24年度末時点で7割減の165種類まで圧縮。2年間の累計コストダウン計画1630万円に対して約1820万円と目標を上回る成果を出せたという。
物流は。専門的な知識を持っているDHLサプライチェーンへ物流業務を外部委託することで、政府が進める「物流革新に向けた政策パッケージ」で求められている物流の効率化などの施策を計画的に実行。また、出荷頻度に応じた在庫ロケーションの見直しと積載効率を勘案した物流計画によって、「必要なものを必要な場所に必要なときに必要な量だけ」確実に届ける仕組みを構築している。
製品(液体・粉体)を容器へ充填する作業を自動化することで生産性向上と作業環境改善を図る計画。
(藤原秀行)