「2024年問題」や温室効果ガス削減への対応推進狙い

「2024年問題」や温室効果ガス削減への対応推進狙い

郵政・増田氏とヤマト・長尾氏が会見で協業方針説明

日本郵政の増田寛也社長とヤマトホールディングス(HD)の長尾裕社長(ヤマト運輸社長兼務)は6月19日、両社グループ間の協業に関し、東京都内で記者会見した。

両氏は協業の狙いとして、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」や温室効果ガス排出削減などへの対応を進めていくことと強調。協業の範囲を今回合意したメール便や小型・薄型の宅配荷物から他の領域にも広げていくことに強い意欲を示した。

また、日本郵便が持つ全国をカバーしている2輪や軽4輪の配送ネットワークと、ヤマトが展開しているトラック輸送や冷凍・冷蔵基盤を組み合わせることで、中期的に収益を伸ばしていけると期待を見せた。


会見後の撮影に応じる(左から)ヤマトHD・長尾氏、日本郵政・増田氏、日本郵便・衣川氏

増田氏は「日本郵政グループ、日本郵便について言うと、荷物の量が2020年をピークにして少し減っていたゆうパック、ゆうパケットのトップライン(売上高)を引き上げることが大きな経営課題になっていた」と説明。ヤマトが「ネコポス」で取り扱っている小型・薄型の荷物を取り込むことで日本郵便の輸送効率引き上げなどにつなげられるとの見方を示した。具体的な収益の伸びに関する展望については言及を避けた。

長尾氏は「今回のパートナーシップの構築が、様々な領域で良い化学反応を生み出し、そして物流が提供する社会的価値がさらに向上することを実現させていきたい」と述べ、ヤマトが強みを持っている冷凍・冷蔵輸送などに協業の領域を広げていくことに意気込みをのぞかせた。

増田氏は「お客様と地域を支える共創プラットフォームの実現のため、郵便・物流事業、銀行業、生命保険業の各分野において、様々なグループ外企業との協業を積極的に推進している」と解説。ヤマトとは2020年、北海道など一部地域でメール便の配達を受託していたことに触れ「今回の協業も、お客様と地域を支える共創プラットフォームの強化につながるものとみている」との位置付けを示した。

長尾氏は、メール便と小型・薄型の荷物宅配「ネコポス」の配送を日本郵便に移管することに関し「この2つのサービスは当社としてそれなりの経営資源を使っていることは否定できない。両者がパートナーシップを組むことで、旧来に比べてさらに良いサービスを構築できる可能性があると思っている。そういう意味では当社にとってまだまだこの領域のビジネスを広げていく上での、強いパートナーと一緒にやっていけるという意味では、いい材料と言えるのではないか」と説明。両サービスの業務負荷が大きく採算改善が見込めないことが協業に踏みきった背景であることを示唆した。

会見に同席した日本郵便の衣川和秀社長は、既に協業している佐川急便との関係について問われたのを受け「今いろんな提携関係を深めていて、そちらはそちらでしっかりやらせていただきたい」と述べ、継続する姿勢をアピールした。


会見に臨む(左から)ヤマトHD・長尾氏、日本郵政・増田氏、日本郵便・衣川氏

(写真・安藤照乃、本文・藤原秀行)

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