ラサールが不動産投資リポートに関連し予測
米不動産運用大手ラサール インベストメント マネージメント(LIM)は8月8日、2019年の主要30カ国における不動産投資市場の展望と推奨する投資対象を説明した「グローバル不動産投資戦略」の中間リポートを公表した。
年初からの経済情勢などを踏まえ、現状では新たな金融危機や深刻な世界的景気後退は基本的なシナリオには入っていないとしながらも「世界経済の低迷と不動産市場におけるクロスボーダー取引の急激な減少」をリスクとして明示。先進的な物流施設といった安定的な収益を生み出せるアセットへの投資を引き続き薦める考えを強調した。
LIMは毎年、2~3月ごろと7~8月ごろの年2回リポートをまとめている。年初に続き、米中貿易摩擦などを考慮して不動産投資に慎重さを備えることが必要との認識が示された格好だ。
アジア太平洋でオフィスより賃料が安定
LIMでアジア太平洋地域の投資戦略・リサーチ責任者を務めるエリーシャ・セ氏らは同日、東京都内でリポートに関する記者説明会を開催した。同氏は世界的な金融緩和傾向に伴い、利回りがマイナスの債権残高が積み上がっていることなどに言及。リターンを強く求める投資家にとって不動産投資市場が魅力的な存在になっているとの見方を示した。
主要エリア別では、欧州の主要物流施設市場は優良な開発用地が限られていることなどから供給量が極めて低水準にとどまり、賃料上昇が加速していると説明。アジア太平洋地域でも物流施設の賃料はオフィスより安定しており、先進的な物流施設が引き続き投資家に選ばれているとの見解を明らかにした。
LIMの日本法人、ラサール不動産投資顧問の日本・韓国の投資戦略・リサーチ部門に所属する佐久間誠氏は、日本の物流施設市場について、堅調な需要が安定したインカム(賃料収入)を下支えしていると分析。特に首都圏と近畿圏は空室率が過去の平均以下の水準で推移すると予測した。
同時に「サブマーケットごとに細かく動向を見ていくと強弱があり、今後はより違いが明確に出てくる」と予想。具体的にどのエリアで強弱がより鮮明になるかについては言及を避けたが、投資に際してはエリアの需給バランスなどを冷静に見極めることが重要との姿勢をにじませた。
(藤原秀行)