ZOZO前社長・前澤氏、残る社員らに謝辞と期待
ヤフーがZOZO買収を発表したのに伴い同社社長を退任した前澤友作氏は9月12日、東京都内で記者会見した際、1人で演壇に立ち、自ら創業してから21年間に及ぶ歩みを回顧し、関係者に謝辞を述べるとともに、自身の思いを吐露した。
買収について「ZOZOはファッションの好きな人だけでなく、あらゆる皆さまに(サービスを)届けるサービスをしていかなければいけない局面を迎えていた。ヤフーとの提携でZOZOの未来は大きく開かれたと信じている。結婚のような提携になるのではないか」と説明、今後の成長に期待を見せた。
1人であいさつする前澤氏
「経営が抜本的に変わる時」
旧社名のスタートトゥデイを含む「Let’s Start Today(新しいことを一緒に始めよう)」と書かれた白いTシャツにジーンズ姿で200人以上の報道陣の前に現れた前澤氏は「ついに『前社長』ということになってしまった。非常に楽しみがある。僕自身としては21年間(社長を)やってきて、最後の最後で一番大きな決断ができたことをうれしく思う」と後悔のないことを強調。
同時に、「これまで感性に基づく経営をしてきたが、時には読み間違えた。これまで失敗したこともいくつかあった。総合力、チームワークがZOZOに問われているが、自分自身はそれを生かし切れていなかった。現場の権限や裁量を与えられてこなかった。ZOZOの経営の考え方・体制が抜本的に変わる時だ」と反省の弁を口にした。
その上で、自分の後を継いで新社長に昇格した澤田宏太郎氏は自分と全く逆の論理的な経営が可能と強調。ZOZOが変革していけると太鼓判を押した。
同日の午前8時45分にヤフーとの件を正式に情報開示した際、「社内は騒然とした。みんな僕が辞めるとは思っていなかった」と語った前澤氏は感極まり、言葉に詰まった。「21年間、至らぬ僕を必死に支え、時には泣き、笑い、楽しく、ともに……」と社員への感謝の気持ちを伝えようとしたところでこらえきれず、涙を見せた。
最後に、“師匠”的存在のソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がサプライズゲストとして登場。前澤氏からZOZO社長を引退して新しい人生を過ごしたいと相談があったことを明かした。
孫社長は「生きざまがかっこいい。自由奔放。ツイッターを見ても言いたい放題。自分はあれほど自由には書けなかった。ZOZOを始める前にロックバンドをしていた。いまだにロッカーだ」とほめちぎり、宇宙旅行と新たな起業を目指すという前澤氏にエールを送り、前澤氏は終始恐縮している感じだった。
「数年居座ってもいいことはない」と決断
その後、ヤフーの川邊健太郎社長やZOZOの澤田新社長とともに会見に臨んだ前澤氏は、9月に入ってから辞任を決めたと説明。「僕より良い沢田という新社長がすぐそばにいたことに気づいたし、冷静に、客観的にこのZOZOがこれから成長していくために、経営体制とはなんぞやと自問自答した結果、僕が退くことだとの判断に至った」と明かした。
川邊社長や孫氏からは続投要請があったが、「数年居座ってもいいことない、ここは潔く澤田にバトンを渡し、きれいにいさぎよく辞任するのがZOZOにとっても、サービスを利用いただくお客さま、取引先さま、株主の皆さまにとっても、よかろうということで急きょ辞任させていただくことにした」と語った。
(藤原秀行)