危険物貨物の事前告知義務など紹介、慎重な対応を要請
※役職などはセミナー当時のものです
東京海上日動火災保険は2月21日、東京都内の本社で、「改正商法施行における貨物輸送の実務上のポイント」と題したセミナーを開催した。約120年ぶりに運送関連の規約が見直された今年4月1日の改正商法施行に際し、留意すべき点などを解説。荷送人が危険物の海上輸送を依頼する場合は事前にその旨を輸送事業者へ告知する義務を明記したことなどに触れ、慎重な対応を取るよう参加者に要請した。
セミナーは同社損害保険の顧客らを対象に実施、約200人が参加した。第1部では法務省の法制審議会商法(運送・海商関係)部会委員を務めた一橋綜合法律事務所顧問の石井優氏が講演。商法改正の背景を説明した。
石井氏は、商法改正の主目的として、読みづらい文語体の条文を口語体に変えるとともに、商法が作成された当時は存在しなかった航空運送など規律を現代の状況に合わせることになったと説明。陸上、海上、航空の各モードを組み合わせた「複合輸送」に関する規定も新設したことに触れた。
海上運送人の責任に関する改正として、内航運送は適切な整備や船員配置などで船舶が安全に航海する能力があると担保する「堪航性担保義務」に関し、故意・過失がなくても損害が生じた場合は賠償責任を負う「無過失責任」から、一定の注意を払うことが義務付けられ、注意を怠っていないと認められれば賠償責任を負わない「相当注意義務」に改正されたと指摘。「既に同様の規定が適用されている外航運送との間で運送人の責任に大きな差があるのは不都合ではないか、ということで変更になった」と述べた。
さらに、旧来は運送人自身の過失や船員の悪意もしくは重過失により生じた損害賠償の責任は特約で免責にすることを禁じていたが、改正では廃止、特約で免責が可能となることに言及した。
コンテナ船の事故事例を解説、「緊張感持った対応を」
第2部は東京海上日動火災保険の海上業務部貨物業務グループに所属する新谷哲之介氏が「荷送人の賠償責任リスクと対策」に関してレクチャーした。
新谷氏は、改正商法で荷送人が引火性や爆発性を備えた危険物を送ろうとする場合、運送人に対してその旨を通知するよう義務化し、違反すれば損害賠償責任を負うことを明記したと強調。最近の事例として、コンテナ船に搭載していた貨物が燃料タンクの熱で化学反応を起こし、船舶や他の貨物に損害を与える事故が起きたが、荷送人の商社は当該貨物が危険物と運送人に申告しておらず、損害賠償を強いられたことを紹介した。
その上で「荷送人は緊張感を持って貨物が危険品かどうか見ておく必要がある」とアドバイス。対策の一環として、同社の損害保険を活用したリスク回避を提唱した。
(藤原秀行)