主要デベロッパー参加の委員会で政策・税制改正要望作成視野に
主要な不動産会社など150社超で構成する業界団体の不動産協会は、地域社会にも貢献可能な先進的物流施設をより円滑に開発できるようにする促進策の議論を本格化させている。主要なデベロッパーが名を連ねている専門組織「物流事業委員会」で今年6月、今後の活動の方向性として、地域貢献に配慮した物流施設の開発などを実現していくことを確認した。
そのための課題と取り組むべき施策について、同委の下に実務者レベルによるワーキンググループ(作業部会)を設置、検討を重ねている。所管官庁の国土交通省とも意見交換をしつつ、政策や税制改正の要望としてまとめていくことを視野に入れている。不動産協会だけに、物流施設についても不動産としての観点でいかに機能を高め、地域貢献を果たしていくかが議論の軸となる見通しだ。
防災機能強化などが議論の焦点に
物流事業委員会は2018年、同協会が新たに設置した。主要な物流施設デベロッパー17社が参加しており、開発への参入を検討している企業も含まれている。「協会の会員各社の物流事業支援に関する事項」をカバーすると目的に掲げており、プロロジスの山田御酒社長が委員長を務めている。物流施設開発デベロッパーによる初めての業界団体的な存在で、同業内で情報交換をするとともに、政府や関係自治体などとの意思疎通を図る場として期待されている。
同委は今年6月、19年度の物流施設に関する活動として①人と環境に配慮した、安全を軸とした物流施設の開発②インフラとしての物流施設の整備③地域貢献に配慮した物流施設の開発――を実現していくとの方向性で一致した。
同協会は19年度の税制・都市・住宅に関する政策要望で、税制改正の一環として「都市・地域の活性化などに寄与する大規模物流施設に対する支援」を盛り込んだ。同委での検討も、支援策を引き続き具体的に詰めていくとみられる。
山田氏はかねて、物流施設の防災対応拡充や地域社会への貢献などの分野で取り組みを進めることに強い意欲を示している。近年は台風や大雨など大規模災害が続発し、物流施設が被害を受けるなど関心が集まっているため、施設の防災面の機能をいかに高めていくかという点で議論が進むかどうかが今後の焦点となりそうだ。
他には、以前より注目されている、東京湾岸エリアなどで老朽化した物流施設の建て替え促進や環境配慮推進などがポイントとなる見込み。地域貢献の観点からは、設備面でより働きやすい施設を実現し、労働力を確保しやすくすることなどが議論されるとみられる。
(藤原秀行)