ライブカメラで作業を撮影、WMSと連携し細かく分析可能に
日立物流は12月10日、埼玉県春日部市の物流拠点内で9月から本格稼働させた「ECプラットフォームセンター」をメディアに公開した。
物流ロボットなどの先端機器や商品保管スペースを共有し、EC事業者は実際に利用した分だけ料金を支払う仕組み。大規模に自動化してコストを減らすことでEC事業に不可欠な物流のアセット活用の負荷を抑え、スタートアップ企業などの成長を後押しすることでEC物流のニーズを着実に捉えたい考えだ。後編も引き続き、同センターの新たな試みについて紹介する。
「ECプラットフォームセンター」が入る「春日部物流センター」(日立物流のYouTube動画より引用)
EC事業者が在庫保管のためにシェアリングする保管棚
優れた事例を動画で研修に活用
ECプラットフォームセンターでは、チャレンジングな取り組みを行っている。その1つが、日立物流と東芝テックが連携して導入した作業監視システムだ。庫内の31カ所に取り付けたカメラがとらえているライブの映像を1カ所で確認、進捗状況を随時把握できるようにするのが狙いだ。
WMS(倉庫管理システム)と映像データを連動させ、どの作業の時にどの程度の生産性を上げているかを確認する仕組み。ミスが起きたのはどの工程のどの作業だったかを特定できる。映像は過去1カ月程度保存しており、優れた事例を紹介して現場スタッフの研修に用いたり、トラブルの原因を振り返ったりすることも可能だ。省人化を突き詰めている現場ならではのシステムといえる。
ただ、働く人によっては職場で随時監視されていることが気になる場面も想定されるだけに、プライバシーや個人情報の保護に入念な配慮を施すことが引き続き求められそうだ。
作業監視システムがリアルタイムで映し出すセンター内の状況
さらに、今実現を目指しているのが、画像検品だ。画像処理技術を手掛けるPhoxter(フォックスター、大阪府豊中市)と組み、同センター内で実用化に向けて改良を進めている。商品ごとにマスターの画像を撮影して登録したデータを基に、Phoxterの画像前処理技術を活用するなどして、高精度の画像分析を実現させる計画だ。
他にも、商品を入れた段ボール箱には現在、人手で緩衝材を充填しているが、この工程も自動化させることを視野に入れている。
緩衝材の充填作業。将来の自動化を目指している
シェアリング拠点の複数展開目指す
同センター内で記者説明に臨んだ日立物流経営戦略本部の高岡勲副本部長は、同社が現在掲げている、事業・業界を超えた協創領域拡大をうたったブランドコンセプト「LOGISTEED」を体現する取り組みの一環と説明。「当社単独ではなく、さまざまな企業とパートナーを組み、運用を通じて完成させるものと捉えている。進化した日立物流を示していきたい」と意気込みを示した。
高岡副本部長
同社担当者らは、同センターのターゲットとして、1日当たりの出荷量が100~1000件程度の中小EC事業者がベースになると説明。10数社以上がシェアリングすることをめざす考えを示した。
同センターの村上宏介センター長は「将来は(シェアリングの)拠点を複数展開していくことを目指したい」との考えを表明。同社の舘内直スマートロジスティクス推進部長は「投資対効果で自動化設備の導入を考えている」と強調、自動化ありきではなく、顧客のオペレーション効率向上に資する機器の選定を重視する姿勢をアピールした。
村上センター長
中安良二デジタルビジネス開発部長は「今後は事業者の特性に合わせて個別設計と共通プラットフォーム化の両輪でEC物流を開拓していきたい」と解説。大規模なEC事業者には各社の事情に応じた物流改善をサポートする一方で、中小のEC事業者には積極的にシェアリング参加を働き掛けるという2つの方向性を維持し、EC物流全体の需要を掘り起こしていく戦略を明示した。
記者の質問に答える(左から)村上センター長、中安部長、館内部長
(藤原秀行)