【独自取材】オリックス・レンテック、物流業界向けの省人化ソリューション強化

【独自取材】オリックス・レンテック、物流業界向けの省人化ソリューション強化

物流施設開発とも連携、「6カ月間フリーレント」の早期利用獲得目指す

オリックス傘下で産業用ロボットレンタルなどを手掛けるオリックス・レンテックは、人手不足が深刻な物流業界向けに省人化のソリューションを強化している。単にAGV(無人搬送機)などのロボットを貸し出すだけではなく、顧客が抱える課題を踏まえ、最適なロボットを組み合わせ、メンテナンスなどの相談にも積極的に応える方針だ。

引き続きロボットのラインアップを拡充し、物流ロボットを含めて2019~21年度のロボットレンタル事業全体の成約件数を16~18年度の2倍程度まで伸ばしていきたい考えだ。オリックスグループの物流施設開発とも連携し、荷主企業へ積極的に提案していく構えを見せている。オリックス・レンテックは、物流ロボットはまだ製造業に比べて成約件数が少ない分、今後の伸びしろは大きいと期待を寄せている。


AGVなど物流ロボットの利用イメージ(オリックス提供)

「6カ月お試し」で初期負担軽減

オリックス・レンテックは1976年、日本で初めて計測器のレンタルを手掛けるオリエント測器レンタルとして発足。その後は取り扱う範囲をパソコンや環境分析機器などに順次広げるととともに、89年に現社名へ変更した。レンタルの実績は40年以上に達する。

法人向けの次世代ロボットレンタルサービス「RoboRen(ロボレン)」をスタートしたのが2016年。その翌年には、東京都内の2カ所でレンタルロボットのショールームを相次ぎ開設した。自社専任のロボットエンジニアを配置し、各種ロボットの活用方法に関するノウハウを蓄積するなど、「単なるレンタル」と一線を画した取り組みを展開している。

その中でも目立つのが、ものづくりに関するロボットを対象とする「6カ月間お試しレンタル」だ。メンテナンスなどの技術的なサポートも含めたパッケージとして6カ月間の短期レンタルを提供。ユーザーは自社の生産ラインなどに性能が適しているかどうかをテストした上で、長期利用するかどうかを決められる。さらに短期間のレンタルなどにも相談に応じるという。

RoboRen全体では現在、約40機種を取り扱っている。物流や製造現場の人手不足を反映し、人間と一緒に作業する「協働ロボット」や物流現場の搬送などを担うロボットが主力となっている。オリックス・レンテックの小林剛輝新規事業開発部長は「製造業のお客さまにも構内物流の効率化ということで、AGVを提供したりしている。物流現場へのソリューションにも対応していく必要があると気づいて注力しており、引き合いと成約の件数はいずれも着実に増えている」と笑顔を見せる。

新規事業開発部ロボット営業チームの舟山輝氏も「フォークリフトのオペレーターが不足しているなど、物流現場の方々とお話ししているとロボットのニーズ確実に存在しているのは肌で感じている。やはり自社で購入されるとなれば初期投資が相当掛かるだけに、レンタルを真剣に考えていただける」と語る。


取材に応じる小林部長と舟山氏

パワードウェアもラインアップに追加

18年には、オリックスが開発する物流施設に入居するテナント企業を対象に、オリックス・レンテックがAGVなどを最大6カ月間無料で貸し出すサービスを始めると発表した。実際に施設内で稼働させ、その成果を見極めた上で、本格的に使うかどうか判断できるようにするのが狙いだ。ロボットの提供だけでなく、システム構築なども同社が担当する。

現状では初の納入実績獲得へ荷主企業とかなり協議が進んでいるという。実現すれば物流業界にとってもかなり画期的なケースとなるだけに、小林部長は「ぜひ19年度内にお話を取りまとめたい」と意気込んでいる。

ラインアップ拡充についても、今年9月には新たにパナソニック子会社のATOUN(アトウン、奈良市)が展開しているパワードウェア「ATOUN MODEL Y(アトウン モデル ワイ)」を追加することを発表した。「MODEL Y」は装着することで現場作業時の腰などへの負荷を減らせるのが特徴。既に空港の貨物業務や引っ越しなどの現場で使われており、オリックス・レンテックとしても物流や製造の現場で働くスタッフのサポートにつながるとみている。


新たにラインアップに加えた「MODEL Y」(オリックス・レンテック提供)

小林部長は、今後も扱う機種を増やすことに強い意欲を示す一方、「ただやみくもに手を広げるのでは意味がない。市場のニーズを踏まえ、現場の課題解決のソリューションとなる機種を選定していく必要がある」と強調する。

オリックス・レンテックはロボットの貸し出し手であると同時に、国内でも有数のロボットユーザーでもある。そうした立場を踏まえ、同社ではレンタルを通じて得られたユーザーの反応をメーカーにフィードバックすることも手掛けているという。

小林部長は「新しい物流施設には最新のロボットを導入したいとのご要望が多い。当社はこれまでにもパソコンのメーカーと品質会議を定期的に開催するなど、ユーザーとしてお役に立てるよう努めてきた。物流現場向けロボットでもそうした経験を生かしていきたい」と力説する。

サービス体制強化へ今後は専任のロボットエンジニア増強などを検討していく見通しだ。オリックスはグループでホテルや旅館、空港、水族館などの運営も担っているだけに、将来はサービス分野へのロボットレンタルも可能性が広がりそうだ。

(藤原秀行)

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