トークセッションで独自の執務空間創設背景を説明
鈴与はこのほど、静岡市の本社ビル5階に2019年9月開設した独自の執務用空間「CODO」で、「“空間”と“地域”から紐解くこれからの働き方のデザイン」をテーマとしたトークセッションを開催した。
出席した同社の鈴木健一郎社長は、CODO整備の理由として「組織の壁がまだまだあると感じており、何とか取り払って多様なコミュニケーションができるオフィススペースにしたいとの思いがあった」と狙いを説明。「ロジカルシンキングを担う左脳だけではなく、(デザインの考案など直感的な思考を司る)右脳に響くような取り組みもやっていかないと、これからの時代は経営も難しい。右脳に響くようなスペースをつくりたかった」との思いを披露した。
CODOは「CO=共に」と「DO=行う」をくっつけた造語で、同社の経営理念「共生(ともいき)」の精神を表現している。スペースに配置したオフィス家具は可動式で利用者が使いやすいよう自由にレイアウトを変更できる。社内外の打ち合わせやセミナー、集中したい時の個人ワークなど、多様なスタイルで利用できるよう配慮しているほか、心身を休めたり、ストレス緩和・発散をしたりするスペースも確保している。
本社5階の「CODO」
約170人が参加したトークイベント会場
鈴与グループを人や物引き寄せる「磁場」に
トークセッションには鈴木社長のほか、CODOのデザインを担当したロフトワークの林千晶代表取締役と、鈴与がスポンサー契約を結んでいるサッカーJ1・清水エスパルスのクリエイティブディレクターを務めるTakramの田川欣哉代表取締役も参加した。
鈴木氏はCODO新設の狙いとして、社屋の老朽化などに加え、人手不足対策として人を引き付けるオフィスに変えていく必要を感じていたと解説。「(本社ビルが位置している静岡市の)清水で鈴与というグループをマグネティックな(磁力のある)場所や組織にしたいとの思いが根底にある。いろんなチャレンジをすることで、人や物、必要な資金を清水に引き寄せて新しい価値を生み出していきたい」と力説した。
その上で、「フリースペースなので、好きにミーティングや仕事ができる。そういう中で、自分の世界に引きこもるのではなく、隣のミーティングは何をやっているんだろうと話を聞いて自分が学んだり、もっとこうした方がいいんじゃないかみたいなアドバイスをさらっと言えたり、そうしたことで新たな気付きや発想が生まれてくると思う。工夫は必要なのかもしれないが、そうした状況を実現していけるようなスペースにしたい」と働き方改革に臨む強い姿勢をアピールした。
林氏は経営者としての自身の経験も踏まえ「カウンターで仕事をする方が落ち着くとか、カフェで仕事をする方が落ち着くとか、人が仕事をしやすい環境は本当に1人1人異なっている。その異なった環境を整備してくれる会社に人は自ずと引き寄せられていく」と指摘。
田川氏は「イノベーションは普段会わない人たちが出会ったときに起こる。人がパソコンに向かってばかりいると何をしているか分からないから声を掛けられない。そうすると会話が出なくて発想が生まれない」と語り、CODOのような開かれた空間の必要性を訴えた。
トークセッションの最後に鈴木氏は「(CODOのような取り組みは)219年の歴史で初めて。何回も重ねていけばいろんなことが1つずつ実現されていくのではないか。この空間をどう使っていくか、地域としてこういう新しい空間をどれだけ生み出していけるか、そういうことを考えれば静岡の活力も変わってくる」と締めくくった。
CODO創設の思いを語る鈴木社長
(左から)田川、鈴木、林の各氏
(川本真希、藤原秀行)