ZHD・ヤマト業務提携発表会見詳報(前編)
ヤフーなどを傘下に持つZホールディングス(HD)とヤマトホールディングスは3月24日、業務提携で基本合意したと発表。具体策として「Yahoo!ショッピング」の出店者向けに新たな物流サービスを提供していくことを明らかにした。併せて、ZHDはECサービスをさらに強化していく方針を示した。
会見での出席者の発言内容を3回にわたって詳報する。
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第2の「eコマース革命」に物流が必要
ZHD・川邊健太郎社長
「全体の概要について説明する。ZHD、ヤフーのeコマースだが、2013年に「eコマース革命」を宣言させていただいた。出店手数料とロイヤルティーの無料化だが、これ以降順調に取扱高が伸び、5年間で約3倍になった。市場成長がだいたい1・5倍といわれているので、その倍の規模に成長した。その結果、万年突き放された3位といわれていたヤフーのeコマースが、直近で言うと2位、1位の背中がかなり近いところまで見えている。そして20年代前半には日本の市場でeコマース取扱高ナンバーワンになりたいというような考えを持っている」
「この3倍の取扱高成長の時に、ヤフーのeコマースは品ぞろえが多い、あるいはとてもお得であるというような認識をユーザーの方に持っていただくことによって、伸びてきたのではないかと考えている。しかし、ここからナンバーワンになるには、さらにその他の部分の質も上げて、われわれのeコマースをユーザーの方に使っていただきたいと考えている。それが本日発表の、われわれのeコマース革命の第2弾というか、進化を発表したい。それは一言で申し上げると、欲しい物が欲しい時に手に入る世界を実現していくということ。ヤフーのeコマースは品ぞろえが豊富にある、お得だというイメージに加え、欲しい物が欲しい時に手に入る、そんなeコマースにこれから進化していく」
会見に臨む川邊社長(写真は全てZHD提供)
「欲しい物が欲しい時に手に入るために、われわれが取り組まなければならないことは物流や配送。これは以前からわれわれも必ずいつかは実施していくというふうに申し上げてきたテーマだが、このたび、この物流配送の強化に取り組む」
「その方法が3つあると考えている。1つはZOZOやアスクルといったグループ内にある、既に自前の倉庫や配送網を持つ当社のグループ企業、パートナー資産をしっかりと活用することかなと思っている。そして、2番目、3番目が本日発表させていただく内容。2つ目がヤマトとの業務提携、3つ目がリアル店舗との連携。これらをミックスして、欲しい物が欲しい時に手に入る世界を実現していきたいと考えている」
「最初にヤマトとの業務提携に向けた基本合意をしたということに関してお話をさせていただく。ZHDとヤマトHDは物流、そして配送の強化を目指し、業務提携に向けて基本合意した。内容は主に2つのことが実現できるというように考えている。1つのヤフーのeコマースにおける物流品質の大幅な改善。われわれの長年の課題であった、商品の翌日配達率が大幅にアップすると考えている。すなわち、『Yahoo!ショッピング』や『PayPayモール』というヤフーのeコマースで購入いただいた商品が、すぐに届くようになるということ。そしてもう1つはヤフーのeコマースサービスにご出店いただいているストアの皆さまの負担の軽減となる。出荷作業に伴う負担、手間暇、配送に掛かる人件費などのコスト削減もこれによって期待できるのではないかと考えている」
提携の狙いを語る川邊社長
配送の部分も次のステージを検討
ヤマトホールディングス・長尾裕社長
「今回、『Yahoo!ショッピング』と『PayPayモール』の出店ストアさまに向けて新たな物流サービスをご用意した。私たちはこれを通じて皆さまに2つの価値をご提供したいと考えている。1つはストア運営において日ごろ発生している物流に関わる業務を軽減させること、もう1つは私たちヤマトの配送を通じて皆さまのお客さま、つまり購入者さまの顧客体験を大きく向上させることだ」
「今、私たちを取り巻くeコマースは極めて速いスピードで成長している。従来の通信販売にとどまることなく、食事やレンタカーを借りることもeコマース化しており、あらゆる産業がeコマース化しているといってよいのではないかと思う」
「2000年に約8兆円だったマーケットは、20年には約20兆円にも上るといわれている。そして、これに応える形で、私たち物流事業者の取り扱いもここ10年足らずで大きく数量を伸ばしてきた。足元のこうした状況、そして将来を見据えた時に、eコマースの物流もこれから次のステージに入っていかなければならない。私たちヤマトグループが総力を挙げてそのお手伝いをさせていただきたいと思う」
「ヤマトグループには年間18億個の宅急便を扱うため、24時間365日休まず稼働するネットワークがある。そして、このネットワークを皆さまに向けてオープン化し、さらにネットワークに、eコマースにとって便利な機能を今後、どんどん追加していく」
「ここで、ヤマトグループのネットワークについて少しご紹介したい。お客さまとのタッチポイントとなる宅急便センターは全国に3700拠点、宅急便の仕分け機能を持つ物流ターミナルは70拠点、物流工程で商品に付加価値を追加するロジスティクスセンターは120拠点、荷物の発送・受け取りができるオープン型宅配便ロッカー『PUDOステーション』は5400カ所、そしてコンビニエンスストアなどを含めた取扱店は18万店ある。これら全国に張りめぐらせたネットワークを皆さまのビジネスの成長にお役立ていただきたいと考えている」
「また、弊社が持つ3800万人を超えるクロネコメンバーズの会員や、120万社を超える法人向け会員ネットワーク、ヤマトビジネスメンバーズも間違いなく、新たな価値をご提供できるものと考えている」
会見する長尾社長
「皆さまのeコマース運営には、在庫管理やピッキング、配送、場合によっては返品と、多くの物流業務が伴う。今ご紹介したような当社のリソース活用、さらにZHDさまとヤマトグループのデータを活用することによって、皆さまを物流業務から解放し、より高効率な経営に向けてご支援申し上げたいと思う。そして、購入者さまの利便性はもちろん、ストアの皆さま、ZHDさまがともに成長し続ける、こうしたサスティナブルなECエコシステムの構築を目指していく」
「今回ご用意する新物流サービスは、もちろん全てのストアさまがご利用可能。今後、さまざまなサービスを展開していくが、今回はまずその第1弾。その内容は2つあり、1つはフルフィルメントサービス。出荷に関わる全ての業務をヤマトグループが承る。商品の保管から受注処理、ピッキング、検品、梱包、出荷までを全てヤマトグループのネットワーク上で行うことで、注文から配送までのリードタイムを短縮する。また、キャンペーンのセール時などの物流波動にも柔軟に対応できる体制をヤマトが構築することで、業務量に合わせて物流費用を変動費化させ、コスト削減を可能にする」
「もう1つはピック&デリバリーサービス。在庫自体はお客様の倉庫内で保管し、当日出荷分をトータルピックしたものをヤマトグループのネットワーク上にお持ちいただければ、あとはヤマトが注文ごとに梱包、出荷する。いずれのサービスもヤマトグループのネットワーク上で物流業務を行うことで、配達までのリードタイム短縮や受付、締め切り時間の延長、出荷の業務負荷軽減によるCS強化などが可能になる」
「今回ご提案するサービスは本日から受注を開始し、その後6月30日から全国でスタートする。さらに神奈川県の一部エリアでは、ピック&デリバリーサービスの当日出荷にも対応し、順次全国へ展開していく」
「本日は出荷までの物流周りのお話が中心となったが、今後は出荷後の配送部分についても次のステージを検討していく。外部の配送リソースと連携を強化し、ECの最適解となるラストワンマイルサービスを提供する、そのために今後、ZHDとの連携をさらに強固なものにしていきたいと考えている。ともに未来をつくる。今後の皆さまの成長に、私たちヤマトグループもぜひご一緒させていただければ、と思う」
新たな物流サービスの利点を強調する長尾社長
(藤原秀行)