新型コロナでECは質を問われる新たな局面に入った

新型コロナでECは質を問われる新たな局面に入った

ZHD・ヤマト業務提携発表会見詳報(後編)

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詳報前編:「欲しい物が欲しい時に手に入るEC」実現しナンバーワンに
  中編:「クロスショッピング」で実店舗とECの垣根をなくす

システム外部開放で高コスト構造を解決

Zホールディングス(HD)・小澤隆生取締役専務執行役員

「私からもう1点、お伝えしたいことがある。物流はヤマトさまとしっかりやる、われわれ自体がお店を作っていくのではなくて、お店がある会社さまとしっかりと連携を深め、双方にとっていい世界を作り上げていく。餅は餅屋という言葉がある。やはり皆さま、得意なことをしっかり頑張ることによって、全体を最適化していこうということ。そういう観点からやはり、eコマースのサービス、システムという部分に関しても非常に大きな課題だと思っている」

「そういったサービスを今回ご用意しているが、より多くのお客様に新しいコマース体験、われわれが考えているクロスショッピングだったり、eコマース、AI(人工知能)をがんがん使っているというところにおいて、新しいコマース体験を提供することで、ヤフーとして欲しい物がどんどんどんどん、商品が追加されていくという世界を作り上げたいと思っている。そのためのサービスを1つご案内させていただく」

「Yahoo!ショッピング、PayPayモールと、もう20年以上のeコマースの歴史があり、さらに今回、クロスショッピングという形で新しい概念まで取り込んだエンジンをずっと開発してきたが、これを初めて、外部のお客さまに使っていただけるようなサービス、これをクロスショッピングエンジンと名付けて、提供を開始する」

「企業にとって今、eコマースの成長は絶対に無視できないもの。ただ、eコマースの成長に対して取り込むためには、システム投資を当然しなければならない。また、例えばクロスショッピングみたいな概念が本当に一般化する場合、自分のところでどうやってこれを開発するんだろうかといったような問題で、ずっと追加投資が入る。またお客様の情報、決済に関する情報、これをしっかりとセキュリティーを保った状態で守り抜くためには、これまた多大な投資がある。そして、システムを作っただけでは駄目で、そこにお客様を呼ばなければならない。つまり、お金が大変掛かる状態になってしまっていて、結果的にお店より実はお金が掛からないといわれていたeコマースが実際は本当にそうなんだろうか?というようなことで、苦しまれている会社さんもいっぱいいると聞いている」

「そこで私どもがぜひシステム使ってくださいということでご用意するのがクロスショッピングエンジン。これにより、いわゆるモール出店も当然のごとくできるが、自社のサイトとしてeコマース、またクロスショッピングの機能まで合わせてご提供する。決済手段としてもちろんクレジットカードに加えてPayPayも使えるし、ヤフージャパンのIDも使ってご購入いただくことができるので、お客さまから見ても、消費者から見ても、非常に便利なんじゃないかと思っているし、独自のアプリも展開することが可能だ」

「そして、最新のAIを使って、お客さまごとに出し分けをしたり、CRM(顧客関係管理)という機能も最初から付いている。当然、ヤマトさまとの物流も、もしご希望であれば使いたい場合はしっかりと物流までセットでご提供できる。つまり、私どもにお任せいただければ、ワンストップ、そしてクロスショッピング、全部展開できますよということ。そしてもうこのクロスショッピングエンジン、第1弾は提供先が決まっており、LOHACO(ロハコ)さん。ロハコさんはもちろんお店を持っているわけではないので、クロスショッピングのところはお使いいただけないが、クロスショッピングエンジンはご利用いただける」

アスクル・吉岡晃社長CEO

「クロスショッピングエンジン導入の背景と効果、狙いについてご説明する。アスクルのロハコは自社で持つロハコの本店と、もう一つはPayPayモールで2つのチャネルで販売させていただいている。おかげさまで、PayPayモールについては、非常に好調な滑り出し、伸長で、進捗させていただいている。この度のクロスショッピングエンジンの導入を一言で申し上げると、われわれの自社サイトの課題解決だ」

「どんな課題というところだが、集客からお客さま対応までのわれわれのサプライチェーン全体について、特に自社サイトの課題はサイトの構築というところで、先ほど小澤氏からも話があったが、継続的なシステム投資のこと。例えば、カートだったり、ご購入履歴だったり、カテゴリーの設計だったり、検索だったり、こういったようなところを、日進月歩でインターネットとECは進化させていかなければならない。そして、もっとさらに大事なのはセキュリティー。こちらに関しては、本当に、非常にお客様の安心、信頼といったところを揺るがしかねない。ここに対して、自社のサイト開発が非常に重ねていくことによって、当然人件費、償却費といったものが非常に乗っかってくる。なかなか高いコスト構造になってくるのが大きな課題であり、まさにその解決がこのクロスショッピングエンジンというふうな理解でいる」

「クロスショッピングエンジンを活用することで、先ほど小澤氏からも説明があったが、ヤフーの持つ膨大なデータに基づいた、さらにはAIの活用だったり、そしてヤフーの持つ非常に強いエンジニアリングパワー、こちらに基づく非常に高品質な売り場設計ができる、併せてセキュリティーも継続的に更新できていく。結果として、非常にコストを押さえつつ、品質の高い売り場ができ、さらにわれわれは商品の開発だったり、在庫の確保だったり、お届けの納期を守ることであったり、お客さまとの対応という、われわれが非常に強みとしているところに専念できる。結果として、トータルのお客さまのショッピング体験の質をすごく上げていくことができるのではないかというところが、われわれの導入の大きな狙いだ」

「結果として、PayPayモール店と同様、自社の本店においても継続的な成長を実現していくということにつなげていくと考えている。われわれが先陣を切ってクロスショッピングエンジンを成果につなげていきたいと考えている」


会見する吉岡氏(写真は全てZHD提供)

リアル店舗の売り上げ拡大にも貢献

ZHD・川邊健太郎社長CEO

「最後に、本日の発表内容をあらためて振り返りたい。1つ目はヤマトと連携し、物流や配送サービスを強化していく。また、それに加えて実質送料無料のユーザーのキャンペーンをわれわれの方で行っていきたいと考えている。この新型コロナウイルスの感染拡大防止の局面下において、eコマースも完全に局面が変わったとわれわれは考えている。まさにユーザーが欲しい物が、欲しい時に手に入らなければ他のサービスにするよというような、質が求められるような世界に、これを機に突入したと考えているので、われわれはヤマトさんと連携して、そういった新しいクオリティーのeコマースを追求していきたいと考えている」

「また、2つ目、同様に新型コロナウイルスの影響を受けて、リアル店舗が非常に苦労されていると思っている。従って、われわれはリアルな店舗との連携を強化して、このいろいろな、リアル店舗さんの応援をしていきたいと考えている。すなわち、クロスショッピングという概念を掲げて、eコマースの上でリアルの店舗の商品を検索し、それを購入した上でお店に取りに行く、つまりリアル店舗はネット上で売り上げを作ることができる、こういったことをこれから推進してまいりたいと思うし、クロスショッピングと呼んでまいりたい」

「そして3つ目は、ヤフージャパンが長年培ってきたeコマースのノウハウ、エンジニアリング力を結集したショッピングエンジンを外部に提供する。これはネット上の小売りでも、あるいはリアル店舗でも活用いただけるようなものなので、やはり同様に、今eコマースがリアルでも、ネット上でも強化が、どの店舗さんでも求められていると思うが、そういったことに貢献できるのではないかなと考えている」


発表内容のポイントを説明する川邊氏

「繰り返し申し上げるが、この新型コロナウイルス感染拡大防止の局面下で、eコマースもさらなるアップデートをしていかなければならないと考えている。その結果、ユーザーにとって欲しい物が欲しい時に手に入るという世界をわれわれは実現することを目指していく。また同時に、それはストアの皆さまの負担を軽減して、リアルも含めたお店にわれわれが送客することにより、そのお店の売り上げ拡大にも、こんな局面だからこそ貢献していきたいと強く考えている」


記念撮影に応じる(左から)小澤、吉岡、川邊、長尾、澤田の各氏

(藤原秀行)

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