重油漏れ発生から1週間、環境への打撃拡大阻止が急務に
インド洋のモーリシャス島沖合で商船三井が長鋪汽船(岡山県笠岡市)の関連会社から傭船していた大型貨物船が座礁した事故は、燃料の重油が周辺海域へ漏れ始めてから8月13日で1週間が経過した。海外メディアの報道などによれば、船内のタンクに残っていた燃料は回収がほぼ終了したとみられ、大規模な燃料流出が再び起こる事態は避けられたようだ。
ただ、船内のタンク以外の場所に一部残っているほか、商船三井によれば周辺海域には約1000トンの燃料が漏れ出しており、サンゴ礁などに深刻な打撃を与えている。事故現場近くには野鳥の保護区が設定されているなど、美しい自然が広がり、モーリシャスは観光業が経済の大きな位置を占めている。新型コロナウイルスの感染拡大で観光客自体が激減する中、同国にとっては観光資源が傷つけられるという非常に厳しい状況だ。自然環境への打撃拡大阻止が急務となっており、日本の協力が不可欠だ。
SNSでは国際機関の関係者や多数のボランティアらが各地から集まり、現地で燃料回収に当たり、環境破壊を食い止めようと懸命に活動する様子が多数紹介されている。日本の外務省は8月9日、モーリシャス政府からの要請を受け、国際緊急援助隊・専門家チーム6人を現地に派遣、燃料の防除作業などを支援する方針を発表した。商船三井も社員6人を現地に送り、情報収集や関係当局との調整、燃料回収支援などの業務に当たらせている。
今後は事故の被害に対する賠償も大きな焦点となる。直接的な賠償責任は船主の長鋪汽船が負い、加入している日本船主責任相互保険組合の保険でカバーされる見通し。事故の規模が大きいだけに、座礁した船の撤去費用に加え、現地の観光業や漁業関係者への補償など、被害額が確定するにはかなりの時間がかかることが見込まれる。
事故原因の究明も待ったなしだ。商船三井は事故を受けて8月9日に開いた記者会見で「船がモーリシャス島に近づき過ぎた。島からは10~20マイル(約16~32キロメートル)以上離れる計画だった。悪天候による強風やうねりで北方へ押し流された可能性がある」(加藤雅徳常務執行役員)と説明、調査を急ぐ考えを示している。
(藤原秀行)