ローカル5Gの導入コストを大幅に低減
実証実験から運用まで物流DXをサポート
Wi-Fiと何が違うのか
ローカル5Gの実用化が始まった。「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」を可能にする通信ネットワークの登場は、物流のデジタル化を一気に加速させる可能性を秘めている。
これまで倉庫内の無線通信には主にWi-Fiが使用されてきた。しかし、他の無線と混線したり、電波の届きにくいエリアがある、大量の庫内作業員がモバイル端末を使用すると回線が不安定になる等の課題があった。
また、Wi-Fi環境でAGV(無人搬送車)やAMR(協働型搬送ロボット)を運用すると、セル(電波の届く範囲)をまたいで移動する際にデータを消失してロボットが止まってしまうといった問題も報告されている。
ローカル5Gを利用すれば、これらの課題は解決できる。大量のスマートデバイスやロボットを安定して運用できるようになる。これまでとは次元の違うリアルタイム管理が実現する。
ローカル5Gは、物流センターや工場など、特定のエリア内に限定して5Gの通信ネットワークを構築する自営のシステムだ。通信キャリアに依存しない独立したネットワークであるため外部環境の影響を受けず、強固なセキュリティを確保できる。
ローカル5Gを導入するには?総務省は通信キャリア4社に割り当てている周波数とは別に、一般企業や自治体がローカル5Gを利用するための周波数を確保、2019年12月24日に電波免許申請の受付を開始した。これにより、ユーザーが用途に応じた通信ネットワークを自分で構築できるようになった。
そのユースケースとしては、自動運転やMaaSなどのモビリティ、ドローンの防災利用等と並んで物流センターの自動化や見える化の促進が有望視されている。物流IoTを支える通信技術の本命として期待されている。
物流センターで想定されるユースケース
導入コストを約10分の1に
問題はそのコストだ。通信キャリアの商用5Gの基地局や端末はそのままローカル5Gにも利用できることから、ネットワーク機器のグローバルメーカーは、通信キャリア用に開発した製品をそのままローカル5Gにも展開している。
しかし、通信キャリア向け製品はフルスペックであるため価格が高い。投資金額が1拠点当たり1億円を超えてしまうこともある。そこで国内のイーサネットスイッチ市場でモバイルネットワーク向けにも多数実績を積んできたAPRESIA Systems(アプレシアシステムズ)は、用途を絞ったローカル5G向け専用機器を新たに開発した。
同社の伊藤拓 ローカル5Gプロジェクト営業代表は「必要な機能を備えながらオーバースペックを避けることで、グローバルベンダーと比較して10分の1程度にコストを抑えることに成功した」という。
APRESIA Systemsは日立金属から2016年12月に分離独立した情報機器メーカーで、旧日立電線の情報システム事業部門を前身とする。信頼性の高いものづくりをベースに、コスト・機能の両面で国内市場に最適化した製品・ソフトウェアを提供し続けている。
「APRESIA」ブランドで知られるイーサネット関連製品は、通信キャリアをはじめ、一般企業にも広く採用され、2020年4月現在の累計出荷台数は約60万台に達している。幅広いラインナップ、実績に裏打ちされた品質、価格競争力、充実したサポート体制が評価されている。
伊藤営業代表
国際標準規格に準拠、オープンな5Gシステムを提供
これまで国内の通信キャリア向け事業やLTEのネットワーク構築を数多く手掛けてきたことから、同社にはローカル5Gの活用に関する顧客からの相談が数多く寄せられている。その多くが高額な製品価格に対する不満を口にしている。
そこでAPRESIA Systemsはグローバルメーカーの製品と市場ニーズにミスマッチが起きていると判断、ローカル5Gの実際の用途に基づいてスペックとコストを最適化したローコスト製品の開発に着手した。
国内向けの自社開発製品ではありながら、国際標準規格に準拠することで他社製品との相互接続性を確保、ユーザー企業の展開規模や用途に応じて最適な構成を構築できるオープンな設計を目指した。
その「PoC(Proof of Concept:概念実証)システム」を9月30日にリリースした。「製品版」については来年3月末のリリースを予定している。
APRESIA ローカル 5G の製品コンセプト
※製品スペックを示すものではありません。
簡易キットで運用を検証
APRESIA Systemsのローカル5Gシステム製品版は、簡易かつ安価なローカル5Gの導入を実現する“オール・イン・ワン”システムだ。
国際標準化組織「3GPP(Third Generation Partnership Project)」と「O-RAN(Open Radio Access Network)」の標準に準拠した「Sub-6(4.6〜4.9GHz)」の周波数帯を利用したシステムを、スタンドアローン構成でリリースする。
ユーザー側で使用する端末(UE)はもちろん、コアネットワーク(5GC)、処理ユニット(DU/CU)、通信機(RU)まで、ローカル5Gに必要な全てのコンポーネントを、相互接続性を担保した上でAPRESIAブランドで提供する。また、要望があれば免許取得の代行までも行う。
一方、PoCシステムは、ローカル5Gをユーザーが現場で検証するための簡易キットだ。やはり全てのコンポーネントを備えたスタンドアローン構成で4.8〜4.9GHzを利用する。キットの導入によって実験局の免許申請が可能になり、実運用と変わらない環境で動作を検証できる。
実証実験から生じたユーザーの要求事項には、APRESIA Systemsが製品版の機能を改善することで対応する。PoCシステムの検証後に製品版を購入するユーザーには優遇価格も用意している。
APRESIA Systemsは従来から、「沖縄オープンラボラトリ」やNPO法人ブロードアンド・アソシエ―ション(BA)の「ローカル5G普及研究会」など公的研究会のメンバーとして、産業間の枠を超えたオープンな連携によるローカル5Gの促進に取り組んでいる。その活動や物流系顧客とのやり取りを通じて、ローカル5Gの物流領域における活用には大きな期待を持っている。
伊藤営業代表は「オペレーションの自動化やIoTが進めば、膨大な量のデータが物流センター内で発生することになる。われわれはその通信を支えるパートナーとして、ローカル5Gの導入支援を足がかりに物流のデジタル化に貢献していきたい」という。
お問い合わせ先
APRESIA Systems 株式会社
〒104-0045 東京都中央区築地二丁目3番4号築地第1長岡ビル8階
https://www.apresia.jp/
TEL:03-6369-0400