AI活用の配船最適化「船員の働き方改革にも直結」

AI活用の配船最適化「船員の働き方改革にも直結」

ベンチャー企業のグリッド・曽我部社長がオンラインセミナーで意義強調

AI(人工知能)を活用した各種ソリューションを展開しているベンチャー企業のグリッド(東京都港区北青山)は11月19日、「AIによる海上輸送の効率化から働き方改革への可能性」と題するオンラインセミナーを開催した。

同社の曽我部完社長が、現在手掛けているAIを活用した配船最適化の概要を説明。2019年に出光興産と組んで実施してきた、製油所から油槽所へ製品を海上輸送する際の配船に関する実証実験ではAIの導入で輸送効率が最大20%向上し、配船計画策定時間を60分の1まで短縮できたと効果をアピールした。併せて、燃料消費量低減による環境負荷抑制にも貢献できると分析した。

その上で、AIを駆使することで業務効率化を促進し、船員の働き方改革にも直結すると意義をPR。内航船だけでなく外航船にも適用していけるよう取り組みを継続していく意向を明らかにした。

曽我部社長は実証実験に関連し、製油所や油槽所の場所、各港湾のバースや入港制限、荷役可能時間・曜日といった50超の条件を加味し、配船計画を策定したと解説。全国のバースで今後の入船などの予定が関係者間で細かく共有できるため、現場に負荷が掛かりにくくなると強調した。

さらに、台風など天候によるリスクを回避した安全な航路を実現したり、バース利用の回転率を改善して船が港の沖で待つ時間を減らしたり、港での積み上げの順番やリールを考慮して積載効率が最も良くなる積み方を考えたりできるようになると見込むほか、将来はAIを生かして船員のシフト立案まで担えるようになる可能性があると予想した。

曽我部社長はさらに「(AIを活用することで)生産拠点の統廃合など将来的に起こり得る需要の変動を加味して、将来どうなるかを疑似的にいろいろシミュレーションできるようになる」と展望。経営のシミュレーション的な機能も持たせられることに期待を寄せた。

セミナーでは曽我部社長に先立ち、国土交通省海事局船員政策課の有田翔伍課長補佐が「船員の働き方改革の実現に向けて」と題し、今年9月に同省の交通政策審議会海事分科会船員部会が公表した船員の働き方改革に関する取りまとめの内容を解説。内航船員の高齢化など将来の船員確保に懸念が生じている中、改革で幅広い層にとって船員が魅力的な職業へ変えていく必要性を訴えた。

(藤原秀行)

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