ニチレイロジグループで総力挙げる業務革新の全容(後編)

ニチレイロジグループで総力挙げる業務革新の全容(後編)

ニチレイロジグループで総力挙げる業務革新の全容(前編)

ニチレイロジグループで総力挙げる業務革新の全容(中編)

RPAで業務全体の5万時間分短縮を目指す

 ニチレイロジグループ本社は11月15日に東京都内で開いた「第7回ロジスティクス・ソリューションセミナー」で、今後ますます需要が拡大すると見込まれる低温物流のネットワークを維持・発展させていくため、グループの力を結集して推し進めている業務革新の現状と成果を詳細に報告した。

 最終の第3回は、同社が産業界で導入の機運が高まっている、自動化ソフトを駆使して仕事を効率化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と、新たな技術の導入に挑んでいる実態を紹介する。


約250人が業務革新の報告に耳を傾けた

OCR活用しファクス受注処理の時間半減

 セミナーで同社の北川倫太郎業務革新推進部長は、事務の効率化を図ろうとRPA活用へ積極的に取り組んでいる姿勢を繰り返しアピール。「業務の見える化をするので、標準化も進むと思う。入力のオペレーションをされていた方々の仕事がなくなるのではなく(効率化で空いた時間を)もっとお客さま対応、コミュニケーションの強化や次の改善活動の検討といったところに仕事、リソースをシフトしていく効果が大きく見込める」と利点を説明した。

 導入のステップとして①ツールの選定②人材育成③育成のためのサポート体制構築――を明示。

 ①については、RPAに適用できそうな業務が全体のどの程度あるかを調査した結果、約半数が該当するとの感触を得たため、どのツールを導入するかの検討に移った。


セミナーで図示した同社のRPA導入ステップ

 選定の際のポイントとして、ユーザーインターフェースの良さやサポート体制などを重視。同社としては作成する人のスキルによって大きくツールを2つに分けることにした。

 1つは標準化が可能で、全国で手掛けているような大量処理の業務などは専門家に任せて複雑なRPAを作り、高度な効率化をしていく方針を決定。「最もメジャーなツールのUiPath(ユーアイパス)を使い、文字認識のOCR(光学式文字読み取り装置)と組み合わせた処理で大きな効率化を果たした」(北川氏)。

 一方、全国のセンターごとに抱えている多数の顧客の要望に応える業務は、画一化が難しく、まとめて大きな仕組みを作るだけでは処理しきれないとみて、各事業所単位でRPAを構築することを目指し、エンドユーザー向けに純国産のRPA「WinActor(ウィンアクター)」を採用した。販売代理店は前者がKPMG、後者がパーソルプロセス&テクノロジーを選んだ。

 前者のRPAが対象とした業務は、従来はファクスで受信したオーダーをそのままパソコン内にデータとして取り込み、スタッフがデータを見ながらグループのWMSに入力する流れだった。入力内容に間違いがないか人手を割いて確認していたことなどもあって、1受注で240秒くらいの工数を要していた。

 ユーアイパスを使った結果、受信後にOCRで文字を自動的にテキスト化し、RPAがデータとしてWMSに取り込む段取りに変更。1受注当たり118秒とほぼ作業時間を半減できた。担当者が念のため正誤をチェックする過程も残しているため、大きなミスは発生していないという。北川氏は「トライアルで非常に大きな効果が出た」と成果を強調した。

 後者のRPAは、ニチレイ・ロジスティクス東北の盛岡DC(岩手)でトライアルを実施。日常的な提携業務をRPA化することで効果を実感してもらうことや、他のセンターでも手掛けている業務をRPA化して別のセンターに横展開していくことなどをテーマに設定した。トライアルを進める上では、一部の担当者が掛かりっきりになるのではなく、センターのトップ以下事業所一体となるよう腐心した。

 センター内で細かな削減を積み上げてきた結果、現在は旧来と比べ1日当たり3時間、年間に換算すると1110時間の業務時間削減になっているという。盛岡DCは次のステップとして、年間3000時間の目標達成に挑んでいる。成功を踏まえ、現在は実証実験として全ての地域会社で展開するフェーズに移行した。

 北川氏は「業務の在り方自体を見直す土台づくりと、全社で成果を挙げるということで、われわれ業務革新推進部が主導で実験を進めている」と指摘した。

「RPAエキスパート」50人以上育成が目標

 ②や③の面では、教育のフェーズとして、今年の上期に業革セミナーと題し、全国の事業所で44回、従業員700人以上を対象に実施。梅澤一彦社長のビデオメッセージを流すとともに、RPAの効果を分かりやすく説明し、自らもRPAを使ってみたいと思える機運の醸成に努めた。

 さらに、今年9月に女性向けの「RPA合宿」を2泊3日の日程で2回実施。女性活躍支援の活動と併せて展開し、自ら仕事を変えていく意欲を持つ女性たちにRPAの手法などを学んでもらった。

 現在はより先に進んだ育成のフェーズとして、各地域にスタッフを派遣し、基本的な業務に精通した「RPAエキスパート」を育成している。毎週1~2回、全国で実施しており、18年度は50人以上のRPAエキスパートを育てようと注力している。

 パーソルプロセス&テクノロジーに今年3~6月、専門社員による研修を依頼。RPA化する業務の洗い出し、RPAの基礎操作などを指南してもらった。7月からは同社の技術者がニチレイロジ側に常駐、RPAの習得により本腰を入れて取り組める体制を実現している。

 一連の施策を通じ、19年度にはRPAによる業務削減を全国のセンター合計で年換算して5万時間とすることを目指している。北川氏は「こちらの目標も早く達成できそうだ」と自信を示す。

冷蔵倉庫のフルデジタル化へAIも


日立製作所と共同で取り組む冷凍機器の故障予兆早期把握の実証実験(ニチレイロジグループ本社提供)

 実用化に向けてトライしている新技術についても公開した。同社では「冷蔵凍倉庫のフルデジタル化」という大きな方向性を掲げており、達成に向けた一環として、カメラの画像を基に庫内のフォークリフトなどの現在地を認識し、オペレーションの効率改善や庫内の安全確保につなげることを目指している。

 フォークリフトの上部に取り付けたカメラで、商品やパレットなどに貼り付けた2次元バーコードを読み取り、AI(人工知能)でデータを分析して入荷商品の棚積みなどを自動的に行うことに取り組んでいる。今秋から実際のセンターで複数台のカメラを生かし、リアルタイムで庫内状況を判定できるかどうかの実験を行う予定だ。

 業務革新以外の部分で、「持続可能な物流」実現への取り組みを発表した。災害発生などに備え、今年2月からWMSのデータセンターを東日本と西日本の2カ所に分け、最長でも1時間程度でシステム復旧できる体制に移行。

 また、日立製作所とタッグを組み、AIを生かして冷凍機器の稼働データを収集・分析し、故障の予兆をなるべく早期につかむとともに、運転の効率アップを図る実証実験をロジスティクス・ネットワークの船橋DC(千葉)で継続している。

 川北氏は「スマートな荷主の皆さんの持続可能な物流の実現に向け、これからも取り組んでいきたい」と締めくくり、集まった協力会社や顧客企業の担当者らに理解と協力を要請した。

(藤原秀行)

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