「日本郵政グループは危機的状況」と酷評、国際物流戦略の早急な再検討など要求

「日本郵政グループは危機的状況」と酷評、国際物流戦略の早急な再検討など要求

政府の民営化委が意見書、豪トールの“アジアシフト”も提言

政府の郵政民営化委員会(委員長・岩田一政日本経済研究センター理事長)は4月22日、会合を開き、郵政民営化の進捗状況の総合的な検証に関する意見書を取りまとめた。意見書は同日、郵政民営化推進本部長を務める菅義偉首相に提出した。

意見書は郵政民営化法に基づき、3年に1回程度のペースで策定している。今回の意見書は「この3年間の日本郵政グループは相次ぐ不祥事や業績低迷により、危機的状況にある。『多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上』を基本理念の1つとする郵政民営化のプロセスについては後退していると言わざるを得ない」などと現状を酷評。日本郵政グループ各社に収益向上やガバナンス改善、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進などの取り組みを強く要求した。

また、日本郵政グループの国際物流大手、豪トール・ホールディングスについて「日本郵便の子会社となって既に5年が経過したが、残念ながらグループの利益向上には寄与しておらず、むしろ、経営に損失を与えているといっても過言ではない」と批判。「早急に国際物流戦略を再検討し、その中でトール社をどのように位置付け、同社の3PLの機能をどのように活用していくかなど、日本郵政グループ共通の国際戦略を明確化する必要がある」と指摘した。

さらに、オーストラリア中心となっているトールの経営資源を経済成長が続くアジアなどに移し、ロジスティクスやフォワーディングの事業を成長させていくよう提言。併せて、トールの組織や業務運営を掌握するための経営管理の取り組みが必要と強調、海外で活躍可能な国際人材の育成を強化すべきだと注文を付けた。

日本郵政は4月21日、トールで業績低迷が続くエクスプレス事業をオーストラリアの投資ファンド、アレグロのグループ企業に売却する方針を発表していた。

意見書はこのほか、日本郵便とトールの合弁会社JPトールロジスティクスによる日本での3PL事業本格化など「BtoB物流ビジネスの展開やトール社と日本郵便の営業連携の強化が求められる」との見解を表明。

「今後は日本郵政グループおよび日本郵便のDXによって最適化される郵便・物流ネットワークにトール社も組み込み、顧客である企業における国際的なサプライチェーンマネジメントの最適化・効率化に資する役割を担っていくことに期待したい」と言及した。

(藤原秀行)

意見書はコチラから(郵政民営化委員会ウェブサイト)

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