事業報告会で説明、RPAなど業務革新も持続・加速へ
ニチレイロジグループ本社は5月17日、オンラインで事業報告会を開催した。
梅澤一彦社長は現中期経営計画の最終年度となる2021年度(22年3月期)に関し、売上高が新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で計画に届かないものの、在庫水準回復やコストコントロール徹底の効果で営業利益は計画を達成できるとの見通しを示した。
21年度の施策として、業務革新を一段と推進することを挙げ、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による事務作業自動化などを持続・加速させる方針を明示した。
また、コロナ禍の沈静化が欧州は日本よりも早く進むとみていることなどを踏まえ、海外事業の基盤強化に注力する方向性を表明。欧州で21年中に拠点3カ所で冷蔵保管機能を拡充することや、中国で低温物流の需要拡大を踏まえ、上海に新設した現地法人を軸に新拠点を整備することなどを明かした。
梅澤社長(2019年撮影)
オランダ・ロッテルダムでワンストップサービスを一層拡大
梅澤社長は既に親会社のニチレイの連結決算でも公表されている通り、20年度(21年3月期)の売上高が前期比3%増の2123億円、営業利益が11%増の131億円だったと説明。コロナ禍による巣ごもり需要の発生で家庭向け冷凍食品の利用が伸びたほか、3PL事業の拡大などもプラスになったと指摘した。
20年度にはTC(通過型センター)事業が6%増の619億円と初めて600億円台に到達。国内食品スーパーの13%程度に相当する2320店舗(昨年12月末時点)に配送していることを明らかにした。佐川急便との「飛脚クール便」事業も全国21拠点をベースに、順調に取り扱いを増やしているとアピールした。
21年度の業績見通しは売上高が6%増の2240億円、営業利益が3%増の135億円を見込んでいるとあらためて解説した。
業務革新の取り組みでは、既に発表している通り、21年度に冷凍帯でAGV(自動搬送ロボット)導入の実証実験を始めるほか、RPAで年間27万時間の業務を自動化することや、庫内作業へのタブレット端末導入をさらに進めていくことなどを表明した。
欧州事業は、オランダのロッテルダム港湾地区にあるマースフラクタの低温保管拠点で今年7月、保管能力を旧来の約3万7500パレットから約5万1500パレットへ高めるほか、フランスでもリヨンの拠点は今年10月に約4000パレットから約1万3500パレットに、ルアーブルの拠点は今年12月に約3900パレットから約8900パレットにそれぞれ拡張、稼働させる計画を公表。オランダのロッテルダム港湾で通関から保管などに至るワンストップサービスを一層拡大させるとともに、フランスでも旺盛な保管需要に対応する姿勢を見せた。
さらに、昨年買収した英国で低温物流を展開しているケビンハンコックを活用し、英国での顧客基盤拡充を図ることにも言及した。
マースフラクタの拠点増設後のイメージ(ニチレイロジ資料より引用)
南京で新低温保管拠点が5月下旬に稼働へ
中国については5月に業務を始めた上海の現法「日冷物流投資(上海)有限公司」を軸に、日系の大手コンビニチェーンの物流などを手掛けるほか、新規需要の開拓にも努めると強調。その一環として、5月下旬に南京で稼働開始を見込んでいる新たな拠点「南京鮮華低温センター」(延べ床面積約4000平方メートル)を活用していくことに意欲を見せた。
梅澤社長は欧州の事業展開に関し「昨年度は川上事業を中心に少し苦戦を強いられたが、日本よりも欧州の方が早くコロナ禍から脱却するんじゃないかとみている」と語り、経済活動の活発化に伴って荷動きが増えてくると期待を見せた。
また、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)で「既に英国から欧州大陸側に入ってくる荷物は水際の現物検査が始まっており、通関業務の件数も増加傾向にある。今後は大陸から英国に入る場合も現物検査が始まり、当社のビジネスにとっては追い風になるだろうと考えている」と展望。増設する3拠点の設備をフル活用することで「増収は必ず実行できると見込んでいる」と自信をのぞかせた。
中国事業は「今足元で非常に順調に推移している。(上海の)華東地区以外からもお話を頂戴しており、そうしたニーズに対応するため、現法を設立した。当面順調に行けると認識している」と前向きな見方を示した。
(藤原秀行)