トラックの安全・安心確保「運転支援機能が重要」

トラックの安全・安心確保「運転支援機能が重要」

UDトラックスのトークイベントで指摘、若い世代増える契機にもと期待

UDトラックスは7月1日、埼玉県上尾市の本社で実施した大型トラック「クオン」に搭載する新たな運転支援機能「UDアクティブステアリング機能」発表イベントで、トークセッションを実施した。

日通総合研究所の大島弘明取締役、運送業界の事情に詳しいフリーライターの橋本愛喜氏、交通コメンテーターの西村直人氏が登壇。UDトラックス広報の栗橋恵都子氏が進行役を務め、同社開発部門車両評価部の越川英幸ダイレクターも出席した。

登壇者は、トラックドライバーの負荷を軽減し、安全・安心を確保する上で運転支援機能は重要と指摘。ドライバーを重視した開発を進めることへの要望を相次ぎ表明した。また、運転のしやすさを追求することにより、ドライバーを目指す若い世代が増える契機になるとの期待も示された。


トークセッションに参加した(左から)栗橋、大島、橋本、西村、越川の各氏(YouTube動画より引用)

大島氏は、運送業界が他の業界平均より賃金は1~2割安く、労働時間は2割ほど長い実態をあらためて報告。「労働環境全体として見直すべきところがある。きちんと改善していけば今いるドライバーは定着するし、新しい成り手も少しずつ増えていくと思う」と展望した。加えて、「ドライバーにとって一番長いのは運転している時間。その環境改善を図ることができればドライバーにとっても魅力の1つになってくる」との見方を示した。

橋本氏は、自身も実家が経営する工場でトラックドライバーを務めていた経験があることを踏まえ「ドライバーの環境はどうしても荷主第一主義になってしまい、時間がものすごくタイト。荷待ちの時間がすごく長い。自分も半日待った経験がある」と説明。トラック運転席のシートなどの性能をブラッシュアップしていくことが非常に大事だとの認識を明らかにした。

西村氏は「乗用車と違いトラックは長時間運転席に座る。環境改善には運転支援技術のようなものがどうしても必要になる。大型車の場合、特に急務になっている。運転中の支援をより正確にすることが大事だ」と訴えた。

実際に新機能を搭載したクオンに試乗した橋本氏はその経験から「まるで(配達の際に、おかもちの中で守られている)そばのように快適だった」と独特の表現で歓迎。西村氏も同意し、「運転環境改善と安全性向上の2つが得られる、ドライバーのためのトラックと感じた」と語った。


「クオン」(UDトラックス提供)

今後トラックメーカーに要望することとして、西村氏は「人に寄り添ってずっとサポートしてくれる支援機能は非常に心強い技術。これからも続けてほしい」と説明。

橋本氏は、トラックドライバーが停車した車の中で休憩する際、足をハンドルに上げているのは不規則な休憩時間内に狭い車内で体を休めるには最適な姿勢だと紹介。休憩しやすいとの観点も踏まえ「もう少しドライバー寄りになって技術開発していただけるとさらにうれしい」と話した。

また、千葉県八街市で集団下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、5人が死傷した事故を受け、メーカーとして安全性能向上に継続して取り組むよう強い期待を投げ掛けた。

大島氏は、日通総合研究所で以前、トラックドライバーになった人にその理由を尋ねたところ、車の運転が好きとの回答が最も多かったことに言及。「ドライバーに加えて家族にも安心を与えることができれば、運送業界を目指してくれる人が出てくるのではないか」と展望するとともに、運送業界は中小企業が多いことを踏まえ「ローコストになるよう配慮していただきたい」と注文を付けた。

越川氏は「ドライバーのシートも日本の物流事業に合わせたチューニングをしている。疲労軽減の意味で貢献できるんじゃないかという思いで開発した」と報告。今後も運転支援技術の分野で改良を図ることをPRした。

(藤原秀行)

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