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【独自取材】マーキュリアと伊藤忠組成の不動産・物流業界特化型ファンド、運送高度化手掛けるスタートアップに注視

【独自取材】マーキュリアと伊藤忠組成の不動産・物流業界特化型ファンド、運送高度化手掛けるスタートアップに注視

センター運営効率化の技術も選択肢

マーキュリアホールディングス傘下のマーキュリアインベストメントと伊藤忠商事が共同で組成した不動産・物流業界特化型の投資ファンド「マーキュリア・ビズテック投資事業有限責任組合(通称・BizTechファンド)」は、新たにAGV(自律搬送ロボット)の設計・開発を手掛ける匠(福岡市)への投資を発表した。

BizTechファンドは物流業界に関し、人手不足やIT化の遅れなどの課題解決を後押しするため、自動化・省人化や業務効率化に向けて有望な技術を持つスタートアップ企業などを支援している。今後は荷物とトラックのマッチングのような運送業務の高度化につながるサービスを担うスタートアップ企業も注視していく方針だ。物流業界を大きく変える“物流テック”は引き続き、投資家から熱い注目を浴びている。


匠が提供しているAGV(同社ホームページより引用)

物流関係への投資は累計で5社に

BizTechファンドは2019年5月に設立した。サンケイビルや芙蓉総合リース、日本土地建物、三井住友信託銀行、日鉄興和不動産、アルヒ、三菱倉庫が出資しており、ファンドの規模は約31億円。当初から業務のIT化が他の産業に比べて遅れが見られる不動産、物流の両業界を投資のターゲットに設定し、ある程度事業が成長しようとしている段階のスタートアップ企業や新規事業を立ち上げる既存事業会社、外資企業が日本進出する際の日本法人などを対象に掲げている。

物流業界に対しては、投資を進める上で候補企業の持つリソースが「庫内作業高度化」「システム高度化」「運送高度化」の3点のいずれかに資するかどうかを重視している。庫内作業高度化は高性能のマテハン設備や物流業務を支援するロボット、ウエアラブル端末などを駆使して“倉庫のスマート化”を進められるかどうかを考慮。「システム高度化」はサプライチェーン全体を高度に管理することを念頭に置いている。

「運送高度化」は荷物の追跡、配送ルート効率化、ラストワンマイルスポットの整備などを通じた運送業務の生産性向上に着目している。3点とも、以前より物流業界の課題として解決が叫ばれてきたポイントだけに、BizTechファンドとしては投資を問題克服につなげていけるかどうかを重視している。

これまでに投資してきた企業は内定段階のものも含めて13社。このうち、物流に関連した投資先としては、スマートロックを取り扱うビットキー(東京都中央区京橋)、AMR(自律走行ロボット)開発を手掛けるRapyuta Robotics(ラピュタロボティクス、東京都江東区平野)など4社。今回の匠で5社目となる。

匠は15年設立。AGVの企画から開発、製造、アフターメンテナンスまでを一貫して手掛けることにこだわっており、棚搬送型のAGVや医療現場向けの搬送ロボットなどを提供。オゾンを発生させて公共施設などの空間除菌を担うAGVも実用化している。既に顧客への納入実績があり、技術力やコスト競争力が高く、ソフトウエアとハードウエアの両面で導入現場に合わせたカスタマイズを可能としている点などを評価した。Rapyuta Roboticsと同じく、庫内作業高度化に貢献できるとみている。

マーキュリアインベストメントの中野真平バイス・プレジデントは「匠社は物流や製造業からかなり引き合いが寄せられている。今後もかなりの需要が見込まれる。日本のメーカーとして物流現場などに信頼性と安全性の高いAGVを提供できるのが強みだと感じている」と投資の狙いを説明する。

今後はBizTechファンドとしてシステムや運送の高度化に資する企業への投資も重視し、投資先選定を進める考えだ。中野氏は「今後も数社に投資したい。例えば、荷物とトラックのマッチングサービスといったことも投資領域の候補に入ってくるだろう。新たな取引先の開拓といった面でも支援をしていきたい」と方針を表明。

同じく投資対象として絞り込んでいる不動産関連では、建設中の不動産の完成イメージを確認できるVR(仮想現実)ソフトの開発・販売を担うスタイルポート(東京都渋谷区神宮前)、インテリアの実例共有サイトを運営しているルームクリップ(東京都渋谷区千駄ヶ谷)などに出資してきた。BizTechファンドとしてはこうした実績を踏まえ、不動産関連業務を革新できる“不動産テック”を物流施設の運営高度化に生かしていける可能性があるとみており、技術開発などの動向を注視していく構えだ。

(藤原秀行)

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