TruWeather Solutionsと連携、安価で高性能な大気計測装置を活用
京都大発のスタートアップ企業、メトロウェザーは8月30日、気象情報分析を手掛けるTruWeather Solutionsが「都市の気象センシングインフラ」に関してNASA(米航空宇宙局)と進めている共同プロジェクトを支援すると発表した。メトロウェザーとTruWeatherが協働契約を締結した。
両社はタッグを組み、ドローンなど商業用エアモビリティを普及させる上で不可欠な都市の風速などの気象観測インフラの構築を目指す。メトロウェザーが得意とするドップラー・ライダー(大気中にレーザ光を発射し、大気中の微粒子からの反射光を受信して風速・風向を観測する大気計測装置)とTruWeatherが強みを持つ都市の風況シミュレーションシステムを組み合わせ、特に密集した都市部で先進的な航空輸送サービスを安全かつ安価に提供するために必須となる次世代気象サービスの開発促進を図る。
NASAとのプロジェクトは都市環境で風の影響を測る「Urban Wind Experiment (UWEX)」 を構築するための設計を完成させ、次のPhase2契約を獲得することを目標に掲げている。現在はPhase1の段階で、2022年度のPhase2は実際の都市でUWEXを行うことを計画している。
メトロウェザーは対象となる都市部のライダー観測を行うための最適なセンシングアルゴリズムとデータ収集戦略を提供。観測データを配信するシステムやAPIの設計も行うなど、プロジェクトで中心的な役割を果たす見通し。
メトロウェザーの古本淳一CEO(最高経営責任者)は「小型かつ高性能なドップラー・ライダーを安価に実現できたことで、ドローンポート(バーティポート)やドローン航路上に多数のドップラー・ライダーを展開することが現実のものとなり、ドローンの離発着や飛行に影響を与える局所的な突風やウインドシアをリアルタイムに可視化することが可能になる。また、ドローンポートに限らず地方空港などへの展開も見込まれる。その結果、ドローンの安全運航が確保される世界が実現し、空の安全・安心に貢献できるものと考えている」とコメントした。
メトロウェザーは2016年から3年間、米国海軍研究所の基礎研究予算を獲得し、空母搭載用のドップラー・ライダーの基礎開発を進めてきた。同社のドップラー・ライダーは、この基礎開発をベースに完成させたハードウエアに、古本CEOが大気計測や計測工学の研究で培ってきた高精細信号処理技術を組み合わせ、これまでにない小型・高性能化を安価で実現した。
(藤原秀行)