プロロジスセミナーでCBRE担当者が解説、荷主企業や物流事業者に迅速な対応訴え
プロロジスは2021年9月16日、東日本大震災から10年が経過したことを契機に、東北地方の物流拠点戦略セミナーをオンラインで開催した。
セミナーは講師として、シービーアールイー(CBRE)の担当者が参加。東北地方は震災から着実に復興が進んでおり、沿岸部の工業団地への企業進出が盛んになっていると指摘、先進的な物流施設の需要が膨らんでいると解説した。
また、トラックドライバーの時間外労働規制が強化される「2024年問題」への対応として、長距離輸送が難しくなるため、東北エリアに物流施設を置く必要性が高まっていると分析。荷主企業や物流事業者にも早期に良好な施設を押さえるなど、迅速な対応をアドバイスした。
「エリアを広く捉えて物件の情報収集」が多い
担当者は、東北で被災の程度が大きかった宮城、岩手、福島の3県に関し、震災から7年後には製造品出荷額が震災前の2010年の水準を上回ったと分析。海岸堤防(防潮堤)の整備が進み、3県を縦断する復興道路・復興支援道路も全線開通へ工事が継続していることにも触れ、企業活動を下支えする環境が整えられているとの認識を示した。
沿岸部では、仙台港や仙台空港近隣の工業団地では全区画申し込みが完了したところもあるなど、企業の進出意欲が旺盛なことを紹介。賃貸物流施設に関し、宮城エリアを例に挙げると、既存の大型物件が全て満床で、震災後に供給があった約7万8000坪以上も順調に空きスペースを消化、今後は約3万坪の新規供給が見込まれていることを明らかにした。
担当者は東北の物流施設市場を見る上で、岩手の「盛岡・矢巾」と「花巻・北上」、宮城の「仙台」、福島の「郡山」の4エリアに焦点を当て、各エリアの動向を報告。21年の特徴として「面積の大型化が進んでいる」と強調。「空室が限られているので、空きのある物流施設がどこに所在しているかに基づき、戦略を練り上げる企業が非常に多くなっている」との見方を明かした。
各エリアの特徴として、仙台は「顧客の業務拡張に伴い関東エリアからの業務対応が難しくなってきたことによる東北エリアでの利用物流施設の面積拡大ニーズが多く、エリアを広く捉えて物件の情報収集を行う事例が多い」と語った。仙台の中でも物流施設が集中している大和・大衡、泉・富谷、名取・岩沼、宮城野・若林・仙台港・多賀城の4エリアの全てを選択しとして考える傾向が見られるという。
盛岡・矢巾は23年にマルチテナント型物流施設の竣工が見込まれていることに言及。盛岡・矢巾と花巻・北上を合わせた岩手エリアの顧客の依頼内容の特徴は「岩手エリア単独ではなく、仙台や青森との連携を意識したニーズが多く、出てくる空室情報は貴重と評価され、床を押さえた先に仕事が集まってくるという現象が起きている」と述べた。郡山も開発計画が増えていると明かした。
また、「2024年問題」を受けて長距離輸送が制限されるため、ドライバー1人当たりの労働時間を短縮しつつ生産性を向上させることが荷主企業や物流事業者にとって急務となっており、そのことが東北3県に物流施設を構えるニーズにつながっている側面があると解析。
担当者は「ドライバーが1度に走ることが可能な距離は片道3時間ちょっとに限られてくる。3時間でどこまで運べるかを考えると企業の在庫戦略が変わってくる」と語り、東北エリアを“南北”に分けて物流拠点を配置するとの新たな視点が顕在化していることを明らかにした。
同時に、貴重な物流施設のスペースを先に押さえようとする荷主企業や物流事業者の動きが見られ、新規供給を生かした物流拠点の移転計画が増えていることなどについても語った。
セミナーの冒頭、プロロジスの栗原開発部長は「これまで東北は仙台エリアを中心に2007年以降、9棟の開発実績がある 仙台の泉エリアでも3棟ある。東北エリアも重要なマーケットと位置付け、開発を続けていきたい」と述べた。
(藤原秀行)