先端ロボティクス財団など、準天頂衛星「みちびき」の位置情報活用
ドローンの競技会運営などを手掛ける一般財団法人先端ロボティクス財団は3月24日、ドローンが横浜市金沢区から千葉市美浜区の稲毛海浜公園プールまで東京湾の上空100メートルを約50キロメートルにわたって自律飛行し、物を運ぶ実証実験をメディアに公開した。
同種の実験は昨年6月に続いて2回目。今回は新たに、日本版GPSの準天頂衛星システム「みちびき」による位置情報を使い、より高精度な飛行を実現。使う機器は全て日本製のものを採用し、「オールジャパンによるドローン物流」の実現を図っている。
離島や中山間地ではドローン物流の確立を目指した実証実験が盛んに行われ、実用化も見えてきている。政府は今年12月をめどに、人口密集地の上空でドローンが目視外飛行できる「レベル4」を解禁する準備を進めており、同財団は都市部上空のドローン物流を早期に実現したい考え。
千葉市上空に到着したVTOL可変翼プレーン「不死鳥」
機体の電動化に意欲、輸血用血液などの運搬も想定
実験は内閣府などの事業の一環として実施。千葉大学や日本ドローンコンソーシアムなども協力している。
実験に使ったのは、長い滑走路を使わず垂直離着陸が可能で翼の大きさを変えられるVTOL可変翼プレーン「不死鳥」。長さ1.95メートル、幅2.59メートル、高さ1.12メートル。飛行速度は時速約50~70キロメートル。総務省が2008年に制度化した、簡単な手続きで使用できる351メガヘルツ帯の簡易無線局を活用するなど、ドローン物流を容易に実現するための工夫を凝らしている。
VTOL可変翼プレーン「不死鳥」
VTOL可変翼プレーンのドローンは横浜市金沢区のESR所有地を離陸後、「海ほたる」の近くなどを通って1時間程度で稲毛海浜公園の上空に姿を見せ、プールに設置した専用の着陸設備「ドローンステーション」の上部に無事着陸した。前回と同じく、歯の治療に用いる約80万円相当の歯科技工物をドローンに搭載、問題なく運んだ。
ドローンステーションの上部に着陸
運搬した歯科技工物
同財団の野波健蔵理事長はメディアの取材に応じ、歯科技工物のような高価なものを運ぶことで、都市部のドローン物流サービスの収益を確保できるようにする狙いがあるとあらためて説明。「50キロメートルの距離を飛行して荷物を運び、狭いドローンステーションの上部に着陸するというかなりハードルの高いことをやり遂げられた。今日の実験は100点満点だったと思う」と笑顔を見せた。
同時に、今後の課題としてドローンの電動化や、ドローンステーションを使った荷物の取り降ろし自動化などを挙げ、レベル4解禁をにらんで2023年中に都市部でのドローン物流に必要な機体の型式認証などの準備を完了したいとの考えを示した。また、歯科技工物のほかに、輸送のスピードが求められる輸血用の血液などもドローン物流のニーズが高いと指摘、実現を目指す意向を強調した。
さらに、ドローンが運んだ荷物を宅配ロボットが運搬するところまで自動化させることに意欲を見せた。
実験に協力したDSデンタルスタジオ(千葉市)の小山田真一朗社長は、歯科技工士の世界も人手不足が進んでおり、業務の効率化が課題になっていると解説。「最後の配送の部分でも移動時間を大幅に短縮できるのは非常に魅力。ドローン物流に期待したい」と語った。
野波理事長。後ろは高さ約2メートルのドローンステーション
(藤原秀行)