離島の移植医療環境向上目指す
ANAホールディングス(HD)と長崎県五島市、そらや、長崎大学は3月25日、移植医療環境の向上を目指し、国内初のドローンによる臓器(ラット肝)の搬送実証実験を同市で3月5日に実施したと発表した。
移植医療は安全に迅速かつ良い保存状態で臓器を搬送することが重要なため、特に離島ではドローンの活用が期待される。実証実験は長崎大学大学院 移植・消化器外科(江口晋教授、曽山明彦講師)による計画策定ならびに取りまとめの下、動物愛護管理法に則って実施した。
実験は船を使った場合と比較し、利点や課題を検証、円滑に運べることを確認した。各者は医療関係者からも要望が強いドローンによる臓器輸送を早期に実現したい考え。
※以下、プレスリリースより引用(一部、編集部で修正)
臓器移植のプロセスならびにドローンによる臓器搬送の有効性について
臓器移植には、「提供」→「摘出」→「搬送」→「移植」のプロセスがあり、五島市では「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)により、脳死時の臓器提供または移植を執刀できる病院が存在せず、心停止時の臓器提供のみが可能。また移植においては執刀医がドナーのいる病院に出向いた上で摘出から搬送を行うことが多いのが現状。
ドローンの活用により搬送の効率化に伴う臓器提供者(ドナー)の機会損失の防止と執刀医の搬送負担軽減による移植医療環境の向上が期待される。
同実証を通し、ドローン搬送では既存の船での搬送方法と比較しても同等の温度管理、品質の維持、加えて円滑な搬送が可能となり、ドローンによる臓器搬送の安全性・有用性が確認された。(輸送の安定性、全搬送時間の短縮の可能性等)
各社の役割
・ANAHD:ドローンの遠隔運航・管理・教育。配送通知を含む配送管理システムの構築、本実証取りまとめ。また、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に基づき、ドローンを目視外飛行させる承認取得(阪空運第29676号)
・株式会社そらや:関係者のコーディネーションおよびサポート、地域住民、自治体および港湾・漁港等の調整等
・五島市:検証対象となる地域及び関係者との調整等
・長崎大学大学院 移植・消化器外科:臓器搬送に関する実証実験計画の策定と取りまとめ、有用性の各種検証
実証実験概要
(1) 目的:臓器搬送を行う際のドローン搬送の有用性を、船による搬送と比較して確認
(2) 実施日時:2022年3月5日(土)
(3) 飛行区間:長崎県五島市福江港~久賀診療所付近
(4) 輸送物:臓器(ラット肝)
(5) 使用機材諸元:マルチコプター型
・大きさ:2.1m×2.3m×0.43m
・搭載可能重量:4~5kg(バッテリー重量による)
・運用最大飛行速度:10m/s
(6) その他
(画像はANAHDなど提供)
(ロジビズ・オンライン編集部)