米ゼブラ・テクノロジーズのグローバル調査、トレーサビリティと透明性が重要と指摘
物流など産業現場向けデバイス大手の米ゼブラ・テクノロジーズは4月6日、2021年4~5月に実施した医薬品のサプライチェーンに関するグローバル調査結果を公表した。
薬局で処方された薬や治療を必要としている成人患者のうち、薬が偽造・改ざんされていないことや、保管温度に敏感な薬を適切に取り扱っていると確認できることが「重要」と答えた割合が9割に達した。医薬品メーカーに対しては、患者の81%がどのように薬が製造・処理されているのかについて、82%が輸送・保管の状態について、それぞれ情報を開示するよう求めていることも分かった。
調査は日本を含むアジア太平洋と欧米の患者や医薬品・バイオ医薬品のサプライチェーンにおいて事業を展開している医療機関、製造業、医薬品小売業、運輸・物流業の経営陣計3500人以上を対象にオンラインで実施した。
製薬業界経営陣の9割が「サプライチェーン監視ツールへの投資増やす」
患者が薬の原産国や薬そのものの地域規格など、薬の成分の供給元を確認することも重要と答えた割合は80%に上った。薬の製造元が環境、動物福祉、人間社会、公衆衛生を保護する技術に則って持続可能であるかどうかを知りたいと回答したのは患者全体の79%に上った。
患者を保護し、患者が受け取った医薬品の安全性と有効性を確保するために、政府や規制機関と製薬会社がより強固な協力体制を築く必要があると回答した患者は全体の80%以上に達した。患者と製薬業界経営陣のいずれも40%以上が偽造・盗難・汚染された医薬品の撲滅に関して最も責任を負っているのは規制当局、製薬会社、メーカーと指摘した。
一方、トレーサビリティと透明性確保の義務化に対応する準備ができているとの認識を示した製薬業界経営陣は84%で、既に位置情報サービス技術を導入しているか、今後1年以内に導入する予定であるとの回答は4分の3を占めた。
製薬業界経営陣で今後1年以内に医薬品製造およびサプライチェーンの監視ツールへの投資を増やすことを計画している向きは92%だった。
これまでに薬の購入や服用に関して問題に直面したことがあると回答した患者は4分の3を上回り、世代別ではベビーブーム世代が61%、ミレニアル世代が82%と違いが目立った。ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンは「ミレニアル世代はミスに厳しく、自分のニーズを満たす薬局を見つけるために薬局を変える可能性はベビーブーム世代の2倍に達している」との見解を示した。
全患者の70%が過去に良くない経験があったことを理由に、処方する医師、薬局、薬のいずれかを変更したことがあると回答した。患者が経験した問題のうち、上位5項目は、
1. 必要な薬が手に入らない、または在庫がない(32%)
2. 必要な分量が一時的に在庫切れで、一部しか受け取れなかった(29%)
3. 他の場所で同じ商品をより安く見つけた(27%)
4. 必要な時に受け取れなかった(22%)
5. 重篤な副作用を経験した (21%)
――が並んだ。
ゼブラ・テクノロジーズのアジア太平洋地域バーティカルソリューション責任者、アイク・ジン・タン氏は調査結果を踏まえ「アジア太平洋地域の製薬業界にとって、サプライチェーン全体でトレーサビリティと透明性を強化することが重要。テクノロジー主導により透明性を確保することで品質や温度管理、正しい薬の処方、品質不良の医薬品などへの懸念に対し、より適切に対処することが可能となり、結果として長期的な信頼を築くことができる」と強調。
ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンの古川正知社長は「日本の一部の地域では、倉庫や配送センターで使用されているテクノロジーの老朽化により、サプライチェーンの課題に直面している。医薬品サプライチェーンが薬局だけでなくドラッグストアやコンビニエンスストアにも広がり複雑化する中、全体の正確性、コストや作業効率、セキュリティ、顧客満足度を高めるためにデジタル化が求められている」と述べた。
(藤原秀行)