4月に北九州市で墜落事故、警察や消防などに500台納入済み
ACSLが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて開発、販売している小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」が今年4月、北九州市で墜落事故を起こしていたことが分かった。
蒼天は官公庁や民間企業に約500台を納入済みだが、ACSLは6月、機体に不具合が見つかったことを理由に、利用者に対して運用を制限するよう連絡。警察庁や総務省消防庁は現在、全国で運用を停止している。
ACSLは「現在、不具合に対するアップデートを進めており、7月前半までに不具合の解消を実施する」と説明している。現状、蒼天で墜落事故が確認されたのは北九州市の1件のみで、ACSLが手掛けている他の物流向けドローンには現在、同種のトラブルは見つかっていないという。
蒼天(ACSL提供)
蒼天はACSLがNEDOの公募事業に採択され、NTTドコモなどとも連携して開発、今年3月に出荷を始めた。撮影画像や飛行経路といったデータの漏洩・抜き取りを防ぎ、機体の乗っ取りへの耐性を高めているほか、機体の主要部品に国産品や信頼性の高い海外からの調達品を採用するなど、セキュリティに配慮していることが特徴。
ACSLは日本政府が開発を支援した成果を活用し、量産化までたどり着いた初めてのドローンと説明。強風にも耐えられることなどから、災害時の物資輸送や被災状況確認などにも使えると期待されている。
政府は今年12月をめどに、ドローンが都市部上空で補助者なしに目視外飛行する「レベル4」を解禁する準備を進めるなど、ドローンの物流などへの利用促進を図っている。併せて、機体の認証制度を設立するなどドローン飛行の安全性担保にも注力しているが、今回のトラブルは利用拡大に際して安全対策の実効性担保が強く求められることをあらためて示したと言えそうだ。
関係者によれば、北九州市の消防局職員が4月、蒼天を使って同市内で操縦訓練していたところ、突然操縦不能になり、機体が墜落した。けが人や物の損壊などの被害はなかった。プロペラが破損しないよう保護するためのガードを取り付けて急上昇したりすると、制御できなくなる可能性があるという。
(藤原秀行)