不動産協会が決定、庫内作業のDX化や再生可能エネルギー利用促進も
主要な不動産会社などで構成する業界団体の不動産協会は8月2日の理事会で、国に対する2022年度の不動産分野の政策要望を決定した。物流施設に関してはこれまでと同様に、主な物流施設デベロッパー20社以上が参加する専門組織「物流事業委員会」を軸に議論、内容を固めた。
政策要望は「物流が直面する課題の解決に、デベロッパーの立場から貢献するため人・環境・社会にやさしい物流施設の供給を目指す」との理念を基本として、「物流が果たす社会インフラとしての期待がさらに大きくなっており、それに対応するための整備を促進することが重要」と指摘。
同時に、21年度と同じく「消費者のニーズの多頻度化、多様化のために施設の大型化や効率化(機械化・自動化など)の早期対応が求められている」との見解を示し、国に対して庫内作業のDX化や再生可能エネルギー利用拡大、防災対応拡充、周辺住民らが利用できる公園や緑地の整備といった物流施設の価値向上を裏付けするための規制緩和などを実施するようあらためて求めている。
災害などに見舞われても、保管する荷物が荷崩れなどの被害を受けるのを最小限にとどめるとともに、支援物資の輸送や地域住民の避難受け入れなどを担う「ライフライン」の役割を確実に維持できるようにしたいとのデベロッパー各社の狙いがより鮮明になっている。併せて、物流施設が地域社会の維持・発展に貢献するための地盤強化を図ろうとしていることも22年度の政策要望の大きな特徴だ。不動産業界の声に国土交通省などの関係省庁がどの程度まで応えるのかが注目される。
標準的装備となってきた免震設備への支援を要請
防災広場の整備後押しへ固定資産税減免など提案
政策要望を具体的に見ると、物流施設を開発・運営する上で重要視している「防災性の向上、BCP対応」「省人化・自動化、IoTなどへの対応」「老朽化施設の機能更新」「ワーカーに配慮した物流施設」「環境に配慮した物流施設」「地域との共生」の6項目を設定。それぞれ国に実現を働き掛けていく内容を列挙している。21年度から継続して要望しているものが多いが、新規に打ち出したものも複数ある。
「防災性の向上、BCP対応」は免震設備の設置に対する支援措置の設置、免震構造建築物の大臣認定手続きの簡素化や審査期間縮減、電気室の浸水対策への支援、非常用自家発電設備の設置・維持費用への支援などを盛り込んでいる。
いずれも近年の物流施設では標準的な機能となっている免震設備や非常用自家発電設備などの普及をより加速させ、大地震など災害に見舞われても物流機能が完全に停止しないようにするのが目的だ。
「省人化・自動化、IoTなどへの対応」「老朽化施設の機能更新」は物流効率化に資すると期待している立体自動倉庫について、消防設備設置などの基準となる床面積について、高さ5メートルごとに床があるものとして面積に算入するルールの緩和を徹底するよう明記。
他には、トラック予約システムのような物流のDX・標準化に資する設備やシステムなどへの支援措置、特別高圧電流受電手続きの簡素化や申請期間縮減、冷凍・冷蔵倉庫普及に対する支援措置なども打ち出している。物流ロボットなど設備を導入するのに当たって十分な電力を確保できるようにしたり、老朽化が進む冷凍・冷蔵倉庫の機能更新を促したりすることを念頭に置いている。
太陽光発電の普及促進にも目配り
「ワーカーに配慮した物流施設」「環境に配慮した物流施設」としては、21年度と同じく、物流施設における大規模な庇について、建蔽率や容積率の面積参入基準緩和を要望。最近は雨天時など悪天候でも安定して作業ができるよう大型の庇を荷さばき場に取り付ける例が増えているが、現状は先端から1メートル後退した部分のみ面積不算入となっているため、デベロッパーが設置を検討する上でネックになっていることを重視。引き続き声を挙げていくことにした。
併せて、太陽光発電設備や蓄電池の導入時補助制度の拡充、屋外駐車場上部への太陽光発電設備設置時の建築面積や容積率算定の床面積不算入、EV(電気自動車)充電インフラ設備や水素ステーション設備への支援措置拡充などに重点を置いている。
「地域との共生」は、敷地内に地域住民も利用可能な公園や緑地、防災広場などを設置した場合、固定資産税の減免といった支援措置を講じるよう新たに要望。併せて、21年度からの継続として、地元自治体と災害時協定などを結んだ物流施設を対象に、避難スペースの容積率算定床面積への不算入を求めている。
(藤原秀行)