業界初、まず75億円分確保
三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は9月20日、傘下で航空機リースを手掛けるSMBCアビエーションキャピタル(SMBCAC)を通じて、カーボンクレジット(温室効果ガス排出削減量)創出プロジェクトに投資し、航空会社向け航空機オペレーティング・リースにカーボンクレジットの販売を併せたソリューションの提供とカーボンクレジット単独での販売をそれぞれ開始すると発表した。
カーボンクレジットを活用した航空会社向けの脱炭素化支援は、航空機リース業界で初めてという。まずSMBCACが計5330万ドル(約75億円)のカーボンクレジットを調達し、航空会社に販売して脱炭素を支援する計画。
航空業界は、国連の専門機関の国際民間航空機関(ICAO)が年平均2%の燃費効率改善と20年以降はCO2排出量を増加させない「CNG2020」の方針を採択し、グローバルベースでCO2削減目標を設定。ICAOは目標達成に向けた施策の一環として、「国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」に沿ったカーボンクレジット取引制度の活用を提唱している。
CORSIAは脱炭素化への短中期的な施策として注目されており、2021年の運用開始以降、国際線を運航する航空会社はCO2排出量が19年の年間水準を上回る場合、超過分のカーボンクレジットを購入する義務が課されている。現在は自発的に参加した国間の航路が対象だが、27年以降は全ICAO加盟国(一部免除対象国を除く)に義務が課される。
SMBCAClはカーボンクレジット創出プロジェクトとして、CORSIAに準拠したアフリカ・アジア・中南米のクックストーブプロジェクト(調理効率の高いかまを各家庭で普及させ、燃料となる木材の使用量削減などを図る活動)を支援し、認証基準Verified Carbon StandardおよびThe Gold Standardで認証された計5330万ドル(約75億円)の民間主導によるカーボンクレジットを調達。航空機オペレーティング・リースと併せて販売、もしくは単独で販売し、航空会社の脱炭素化をサポートする。
投資対象のプロジェクトは、伝統的な調理方法に頼る地域の各家庭にエネルギー効率が高く環境や健康への負荷の低いクックストーブを提供します。クックストーブを設置することで人々の健康増進、森林伐採の削減、薪集めの労働時間削減、貧困地域の所得増加、および女性の地位向上に貢献すると見込む。
SMBCACは50年までに自社事業でCO2排出量ネットゼロを達成するため、保有機材の最新機種(A320NEO、B737MAX)への入れ替えを推進し、24年中に最新機種の割合を80%程度とすること、環境負荷が低い代替航空燃料(SAF)の普及をサポートするための投資を実行すること、将来的に水素航空機・電動航空機の導入を検討することを計画している。各施策を通じて、航空業界全体の脱炭素化を支援し、持続可能な航空業界の実現に貢献していきたい考え。
(藤原秀行)