最新ロボットなどの説明会で来場テナント候補に課題解決提案
住友商事が物流施設開発事業の差別化に注力している。喫緊の課題となっている物流現場の深刻な人手不足を受け、このほど大阪市内で開催した物流施設の内覧会で、初の試みとして最新のロボットやマテハン機器などを展示し、来場者の希望に応じて具体的な活用方法を紹介する説明会「ロボ・スタジオ」を同時に行った。
今後も定期的に説明会を開催して現場の多様な悩みに応えていくことを視野に入れている。顧客からの声はニーズを押さえた物流施設の開発やリーシングの強化にもつなげていきたい考えだ。
物流施設開発を手掛ける同社の中本昭人不動産投資開発事業部長は「もはや物流施設という“箱”だけを提供する時代ではない。デベロッパーとして自動化や省人化にどう応えていくかが求められている。商社ならではの多彩なリソースを駆使してお客さまが抱えている課題の解決に貢献していきたい」と真意を強調している。
ロボ・スタジオを初めて開催した「SOSiLA西淀川Ⅱ」(住友商事提供)
有効な提案するところまで踏み込む
同社は祖業でもある建設・不動産事業を中核分野の一角に据え、オフィスビルや住宅、商業施設の企画・開発・運営を手掛けている。同事業の“第4の柱”とすることを目指し、近年は物流施設開発に本格進出。「SOSiLA(ソシラ)」ブランドを冠した同社独自開発の物流施設がこれまでに首都圏と関西で計6施設完成した(既存センターの改称分は除く)。
新たな取り組みのロボ・スタジオは、日々の事業を通じて物流の現場で業務効率化の重要性が日増しに高まっていると実感したことを契機として、より物流施設の付加価値を高めたいとの意図を込めている。三井住友ファイナンス&リースグループのSMFLレンタルが展開している物流現場向け機器の展示場「ロボットベース」のコンセプトを基に、単に先進的な機器を紹介して終わりではなく、来場者の抱える課題に沿って有効な提案をするところまで踏み込むことを計画している。
2月6~8日に大阪市のマルチテナント型施設「SOSiLA西淀川Ⅱ」(地上4階建て、延べ床面積1万5404坪=約5万1000平方メートル)で開いた内覧会と同時にロボ・スタジオを実施。荷主企業や物流企業からの参加者は3日間で100人程度を見込んでいたが、実際にはその2倍に達したという。関係者の間で自動化・省人化への関心がいかに高まっているかを如実に示した格好だ。
無柱空間や高い天井スペース案内し機器活用イメージを手助け
初のロボ・スタジオでは、オカムラが販売代理店として扱っている自動倉庫型ピッキングシステム「Auto Store(オートストア)」の詳細を発表。他にもSMFLレンタルが日本電産シンポの人間追従型運搬ロボット「THOUZER(サウザー)」やATOUN製のアシストスーツ「ATOUN MODEL Y」、シャープのAGV(無人搬送車)「XF-100」を案内した。
さらに住友商事グループの一員として、住友商事マシネックスがさまざまなAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)ソリューションをPR。住友重機械搬送システムは自動保管システム「Magic Rack(マジックラック)」の性能をアピールするなど、グループ各社が連携して有効なソリューションを提供していく姿勢を全面に打ち出した。各社の担当者が紹介した機器の一部は実機を置き、実際に体験できるようにした。
荷主企業などからの参加者が多数集まったロボ・スタジオの会場
ロボ・スタジオに先立つ「西淀川Ⅱ」の内覧会では、柱がない広大なスペースや天井高が6・9メートルのエリアを紹介し、ロボ・スタジオで取り上げている「オートストア」や「マジックラック」の導入をイメージしてもらえるよう工夫した。
物流施設のデベロッパーの間では、ロボットを半年間無料レンタルする方針を打ち出したり、施設内にショールームを常設したりと、テナントの業務効率化をサポートするため、旧来の施設を貸し出すところからより踏み込んだ対応を取る動きが広がっている。中本部長は「幅広い顧客企業のネットワークを生かし、多彩なロボットや機器を取り上げることで当社独自の自動化・機械化支援を実現していきたい」と意気込みを語っている。
プレゼンテーションに聞き入るロボ・スタジオ来場者
「SOSiLA西淀川Ⅱ」内の天井高6・9メートルのスペース
(藤原秀行)