22年度にサプライチェーン支援へ日本企業に715億円支出
フェデックスエクスプレスは11月10日、世界各地の主要な地域・市場を分析し、2022年度における同社の世界経済への影響をまとめた初の調査「グローバル経済影響レポート(Global Economic Impact Report)」を公表した。
レポートは、米信用調査会社のダン・アンド・ブラッドストリートと共同で作成。フェデックスがひっ迫するサプライチェーンと経済面の課題を克服しながら、企業が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染拡大)から回復するために不可欠な役割を果たしたとアピールしている。
世界中に約55万人の従業員を擁するフェデックスは5000カ所の輸送施設を稼働させ、22年度には1日平均1600万個の貨物を輸送。また、ネットワークの最適化と投資を行うことで、輸送能力と効率を向上させたという。
フェデックスコーポレーションのラジ・スーブラマニアン社長兼CEO(最高経営責任者)は「今回のレポートでは、地域社会の屋台骨の中小企業支援など、われわれが『フェデックス効果』と呼んでいる日々の継続的かつ重要な活動を紹介している」とコメントしている。
フェデックス効果の具体例として、世界中で1650万人以上を雇用する36万社のサプライヤーと協力したことに言及。その多くは中小企業で、各地域で重要な経済活動を生み出しており、年間収益は合計7000億ドル(約98兆円)に達していると強調している。
22年度にフェデックスのグローバルな経済活動は、全世界の自社従業員以外で19万3000人分の間接的な追加雇用を支えており、21 年度から2万人増加したと見積もっている。
フェデックスのサプライチェーンの88%を中小企業が構成し、各地域のサプライチェーンに関する支出の半分以上を中小企業が占めていると解説。結果的に、世界中で約81万人分の中小企業の雇用を支えているとアピールしている。
22年度に施設の改善、ネットワークの最適化、インフラの改善に前年度比15%増の68億ドル(約9500億円)を投資し、各市場の直接的な経済成長に相関しているとの自負を見せている。
アジア太平洋、中東、アフリカ(AMEA)地域への影響として、フェデックスはレポートで概説されている戦略的な投資を行い、結果的に雇用の13%の増加に貢献し、AMEA地域の3万7000人の従業員以外に5万8000人以上の雇用を支えていると強調している。
フェデックスエクスプレスでAMEA地域社長を務めるカワール・プリット氏は「広州、大阪、ドバイにおけるハブ施設に投資した結果、サプライチェーンが変動する中でも需要に対応し、お客様のために輸送ルートを最適化することができた。また、フィリピンのクラークにあるゲートウェイ施設やデリーのハブ施設の統合など、改良された新施設への投資は、新興市場へのアクセスの拡充と効率化に貢献している」と自信を見せている。
日本では、関西国際空港に2014年から稼働するフェデックスの北太平洋地域ハブがあり、広さは3万9500㎡で1時間当たり9000個の荷物を仕分ける能力を備えていると紹介。21~22年度にかけて、日本から複数の主要な国際地域に向けたフェデックスの貨物量は増えており、カナダ向けが 87.3%、米国向けが54.8%、欧州向けが47.5%、米州向けが37.4%、中東・インド・アフリカ(MEISA)向けが18.5%と、大幅な増加だったことに触れた。
さらに、22年度にサプライチェーンを支援するため、日本国内の企業に対して5億1100万ドル(約715億円)を支出したと活動実績を訴えた。
最近ではサウジアラビア、エジプト、ヨルダン、カンボジアに直営の拠点を開設し、中国・広州のゲートウェイ設備も拡張、新たに華南オペレーションセンターを新設する計画を発表済み。
社会への貢献として、世界各地の慈善団体や非営利団体に8600万ドル(約120億円)以上を寄付したことに触れ、AMEA 地域では環境プログラムや幼児教育、起業、健康管理などの生活向上に役立つ取り組みを進めていることを引用。コロナ禍を受けた中国・上海のロックダウンの際には、住民への食糧援助の重要なパイプ役を務めたほか、インド、韓国、ベトナムなどにもワクチンや重要な医療物資を届けたという。
2040年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の輸送業務を目指すことを表明しており、事業活動を支える再生可能エネルギーへの投資を追求することで、責任を持って世界をつなぐことに取り組んでいるとPRした。
(藤原秀行)