【現地取材・動画】A.L.I. Technologies、都市部のドローン物流想定した飛行実験を公開

【現地取材・動画】A.L.I. Technologies、都市部のドローン物流想定した飛行実験を公開

SBSロジコムの湾岸倉庫と千葉・幕張新都心間で日用品空輸

産業用ドローンや統合運航管理システムの研究開発を手掛けるA.L.I. Technologiesは12月22日、政府が有人地帯上空をドローンが補助者を置かず目視外飛行する「レベル4」を解禁したのを受け、千葉市の幕張新都心エリアで、都市部でドローン物流ネットワークの基礎を構築するための実証実験をメディアに公開した。

以前から協業関係にあるSBSロジコムが東京湾臨海部に構えている物流倉庫と幕張新都心の高層マンションの間でドローンを飛ばし、日用品を空輸した。

運航管理システムはA.L.I.が開発した「C.O.S.M.O.S.(コスモス)」を、ドローンはエアロジーラボ(AGL)製の長距離飛行特化型国産モデル「AeroRangeQuad(エアロレンジクァッド)」をそれぞれ使用した。

飛行ルートの総延長は10km超。物流へのドローン利用が広がることを念頭に置き、C.O.S.M.O.S.を駆使して同じ空域内で2機が衝突などのトラブルを起こさず無事任務を済ませられるかを確認、空輸に成功した。


幕張新都心からSBSロジコムの倉庫に向かう方のドローン。SBSのドライバー(右)が荷物を取り付けている


荷物を搭載して幕張の空へ飛び立ったドローン

空の「交通整理」可能な技術を確立

これまで有人地帯の上空をドローンが目視外飛行するレベル4は原則禁止で、通行人や住民がいない地帯の上空をドローンが目視外飛行する「レベル3」も運航の前に国の許可・承認を得る必要があった。

12月5日の改正航空法施行により、政府が新たに設けた認証制度で適切な機能を持つと認められた機体を、同じく国家資格として新設した操縦ライセンスを持つ人が操縦し、運航ルールを順守すればレベル4の飛行が可能となった。

人が多く行き交う住宅地やオフィス街でも条件を満たせばドローンを運航できるため、市街地での医薬品や食料の配送、災害時の救援物資輸送など、ドローンを物流に本格活用する道が開かれると予測されている。

ただし、ドローンの本格活用には解決すべき課題も多く、その1つが交通整理だ。レベル4飛行の実現に伴いドローンの運航頻度が上がれば、空域内で衝突や接触を回避するため、複数のドローンの飛行計画や飛行状況、地図・気象情報などを集約・共有し、空の交通整理を行う運航管理システムの実用化が急務だ。既に政府が民間企業などと連携し、運航管理システムの開発を促進している。

同社はドローン物流が都市部で広く展開される社会を想定し、複数機のドローンの飛行を一元管理できるシステムとしてC.O.S.M.O.S.を開発してきた。今回の実験ではドローン2機を使用し、そのうち1機は荷物の到着地となる幕張新都心からSBSロジコムの物流倉庫へと逆方向にフライトさせ、道中ではすれ違いもさせることで、1つの運航管理システムによるドローン複数機の同時管理を実証した。


C.O.S.M.O.S.の画面。ドローンに搭載したカメラからのリアルタイム空撮映像や、飛行ルート上の現在位置などが表示されている。奥の大型モニターはSBSロジコムの倉庫から幕張に向かうドローンの管理画面、手前左のノートPCは幕張から飛び立ったドローンの管理画面


C.O.S.M.O.S.(奥のPC)に加え、バックアップとして他社製の運航管理システム(手前のノートPC2台)も用意し、2つのシステムとドローンをLTE電波でつないだ

飛行に不可欠な上空の携帯電波強度を事前計測

電波など、上空のインフラ整備も欠かせない。サービスエリアが広く、高速・大容量のデータ伝送が可能な携帯電話などの端末を搭載し、ドローンが上空で撮影した画像や取得した気候や地形といったデータの伝送に利用したいとのニーズを受け、総務省は2016年から段階的に、携帯電話用の高速通信規格「LTE」(4Gの手前、3Gの高速版)のドローンでの利用規制を緩和してきた。

C.O.S.M.O.S.は、ドローンに取り付けた専用の制御デバイスとの間で、携帯電話の通信キャリアが提供するLTE電波を使って情報をやり取りし、運航を管理する。だが、上空における電波強度に関してはデータが不十分なため、電波が干渉されるエリアや、電波が入らない「ブラインドスポット」が存在することが予想される。

そこで今回は実証実験に先立ち、ドローンを使用して上空のLTE電波を実際に計測し、飛行経路を構築した。想定される飛行ルートを5分割し、ドローンを常に目視できる状態(目視内飛行)にして計測を進めた。

実証実験ではC.O.S.M.O.S.に加え、他社製の運航管理システムをバックアップに用いて、2つの運航管理システムとドローンをLTE電波でつなぎ、一方の電波が途切れても他方がカバーできる体制を取った。

災害時などに電波が途絶えた場合には、事前に設定した着陸地点まで自律飛行できるプログラムも開発してドローンに組み込んである。補助者なしの目視外飛行が解禁されたことで、非常時の自律飛行が可能になり、救援物資の空輸といった活用法も実現が近づいてきたという。

実証実験では、2機のドローンは無事に予定していたフライトを完了。幕張新都心に飛来したドローンから、SBSグループのドライバーが荷物を取り外して、取材に集まった報道陣に成功をアピールした。


(この2つの動画はA.L.I. Technologies提供)

(石原達也)

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