初の会見で表明:日野含む商用車の電動化にも注目
トヨタ自動車は2月13日、東京都内で記者会見し、今年4月1日に移行する新たな経営体制を公表した。
執行役員は現行の11人から8人に減らすほか、副社長もこれまでの3人から2人に絞る。創業家出身の豊田章男社長は代表権のある会長に移る。
佐藤恒治次期社長の下、副社長は商用車や中型車を担当する中嶋裕樹氏と事業・販売を手掛ける宮崎洋一氏がそれぞれ就き、新社長を支える。
北米と中国にそれぞれを本部長が配置。このうち北米は小川哲男氏、中国は上田達郎氏がそれぞれ本部長に就任する。
佐藤氏が記者会見で公の場に立つのは、1月に同社が新たなトップ人事を公表して以来、初めて。佐藤氏は新経営陣が取り組むテーマとして「継承と進化」を挙げ、「商品と地域を軸にした経営」を実践する意向を表明。
脱炭素の流れが強まっているのを受け、欧米や中国のメーカーに比べて取り組みの遅れが自動車業界などから指摘されているEV(電気自動車)への対応を強化していく姿勢をアピールした。
会見する佐藤次期社長
佐藤氏は、重点事業の3本柱として、
・次世代BEV(バッテリー式EV)を起点とした事業改革
・ウーブン(自動運転などの先進技術を実証する実験都市)の取り組み強化
・アジアのカーボンニュートラルの実現
――を列挙。アジアで自動車を軸とした温室効果ガス排出削減に貢献していく方向性を強くアピールした。
3本柱を公表
次世代BEVについては「“EV”ファーストの発想で事業の在り方を大きく変えていく必要がある」と訴え、2021年に策定したEV戦略の具体的な方針を4月以降、公表していく方針を明らかにした。
また、BEV強化の一環として、2026年をめどに高級車ブランド「レクサス」向けに新しい車台や電池を開発する意向を示した。
佐藤氏は「あらゆる選択肢を多くの方に提供することを前提に、選択肢の1つとして、EVで具体的な取り組みを加速していく」と説明。既に取り組んでいるハイブリッド車などと並行して、EVの性能向上を急ぐ姿勢をのぞかせた。
エンジン不正認証問題で経営の立て直しを迫られている傘下の日野自動車の扱いについては明確な言及がなかった。ただ、今回の役員人為では、グループで商用車を担当し、他の自動車メーカーからも出資を受け入れて小型EVや自動運転技術の開発などを担うCommercial Japan Partnership Technologies(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ、CJPT)を率いてきた中嶋氏が副社長に昇格することから、日野自動車の車両電動化や不正防止のための体制変革にトヨタグループ内でより重点を置いていくことも予想される。
佐藤氏(中央)ら次期経営陣の主要メンバー
(藤原秀行)