【独自取材】「2019年は『ドローン飛躍元年』目指す」と決意

【独自取材】「2019年は『ドローン飛躍元年』目指す」と決意

大阪万博の25年に都市部飛行アピール視野―JUIDA・鈴木理事長インタビュー

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ドローン(小型無人機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大大学院教授)はこのほど、ロジビズ・オンラインのインタビューに応じた。

2019年は物流などへの利用がさらに加速する「ドローン飛躍元年」にしたいとあらためて決意を表明。来年の東京オリンピック・パラリンピックで世界の目が日本に集まることを意識し、JUIDAとしてドローンが問題なく飛行できるセキュリティーの確立を後押ししていく考えを強調した。

また、次の段階の目標として大阪万博が開かれる25年を視野に入れ、地方に加えて都市部でもドローンが物流などで安全に飛べる姿を世界にアピールしていきたいとの思いを明らかにした。


インタビューに応じる鈴木理事長

大きなハードルを1つ越えた18年

―2018年の活動をどう総括しますか。

「ドローンにとっては非常に大事な年でした。15年に安倍晋三首相が早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能にすると宣言され、その達成に向けて官民が連携して頑張ってきました。宣言から3年に当たる18年には国土交通省が操縦者の目が届かない遠距離まで自動で飛ばす『目視外飛行』に関する要件を明文化されるなど環境整備が進み、日本郵便さんが国内で初めて郵便局間でドローン輸送の実証実験を始められるなど大きなハードルを1つ越えたかなと感じています。そういう意味で記念すべき1年だったと言えるでしょう」

「JUIDAとしても18年に、物流事業者の方々など向けにドローン物流の際留意すべきポイントなどを盛り込んだ安全ガイドラインを作成、公表しました。今後内容を順次見直していきます。またドローンの離発着場『ドローンポート』を標準化させようと取り組んでおり、先にお話しした日本郵便さんの実験でもわれわれが開発したドローンポートを運用されています。いろんなところに設置が広がっていけばさらにドローンを使いやすくなるでしょう」

「ドローンの安全操縦に必要なスキルや知識を教えるJUIDA認定のスクールは全国で210を超え、海外でも認定校が生まれています。急速に広がっており、われわれも驚いています。最近は特に自動車教習所の方々が、自動車の免許取得に来られる人が減っているため敷地や設備を有効活用したいとドローンスクールに乗り出されるところが増えています。この認定スクールが安全飛行を実現する上で非常に大きな役割を果たしていると思います」

―JUIDAと同様の活動に取り組んでいる海外の協会や団体との連携にも注力していますね。

「現時点で協力のMOU(覚書)を結んだ機関は18に上ります。ドローンの安全運行の教育を手掛けているところもありますので、情報交換しながらともにやっていこうと呼び掛けています。今でも問い合わせが各国から毎月のように寄せられていますので、協力先はさらに増えていきそうですね」

「ISO(国際標準化機構)でドローンを含むUAS(無人飛行機)の標準化活動が始まっています。安全運行のための操縦訓練などの面は比較的合意が取りやすいので、JUIDAがこれまで引き継いできたものをうまく活用し、協議を進めようと取り組んでおり、順調に進んでいると思います。この分野で日本の存在感は非常に強い」


18年12月にマレーシアのUAV協会と協力のMOUを締結(JUIDA提供)

不審な機体排除し管理された飛行を確立

―先日行われたJUIDA主催の新年パーティーで、19年は『ドローン飛躍元年』にしたいと話されていました。その真意は?

「今年に入っても楽天さんが目視外飛行によるドローン物流の実験に成功されるなど、実用化の動きが進んでいます。JUIDAとしても1月に『福島ロボットテストフィールド』でJUTM(総合研究奨励会日本無人機運行管理コンソーシアム)、JUAV(日本産業用無人航空機工業会)と連携し、運行管理システム(UTM)を生かして複数のドローンを目視外飛行させる初の公開実験を行いました。物流で使う場合のリスク管理なども念頭に置いています。こうした取り組みを積み重ねていくことで、本格的なドローンの利用がもっと容易にできるようになっていくでしょう」

「19年はドローンを使った物流が地域限定で本格的に始まっていくのではないか。既に荷物だけではなく人間を大型のドローンに乗せたいといった話も出てきており、そうした広がりも今後は加速していくのではないでしょうか。20年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。世界に日本のドローンをアピールする絶好の機会です。その意味でも今年は20年に向けた飛躍の年と位置付けられると考えています」

―19年はどのようなことに取り組んでいきますか。

「来年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、セキュリティーの部分をきちんと考えて活動の体制を構築していかないといけない。最近も海外で正体不明のドローンが飛来して空港が閉鎖されるといった事件がありました。オリンピック・パラリンピックの際を含めて、決してそんなトラブルが起きないよう、JUIDAとしても何ができるかを真剣に考えていきたいと思います。ドローン自体が悪用されないようきちんと管理されるとともに不審な機体がエリアに入ってくればすぐに察知できる姿をお見せして、世界にアピールできればいいと思っています。20年に向けてセキュリティーの問題は待ったなしです」

「日本ではまだそこまで危機感はないかもしれませんが、海外はさまざまなテロが実際に起きていることもあり、非常に神経を使っています。日本も今のうちから考えておかないといけません。米国やフランスなどはセキュリティーで非常に進んでいますが、日本はまだ残念ながら取り組みが弱いので早く対応していかなければいけません」



JUIDAとJUAV、JUTMによる実証実験の様子(JUIDAなど提供)。下は視察に訪れた石田真敏総務相(右)に実験の内容を説明する鈴木理事長

BtoBの物流への導入期待にも応える

―ドローン物流はいずれ都市部でも実現させていくことが期待されています。JUIDAとしてはどう対応していきますか。

「目標をより具体化して進めていく必要があるでしょう。私としては、25年の大阪万博あたりを見据えて取り組むといいのではないかと感じています。20年はセキュリティー強化ですが、25年は都市部でもドローンが安全に飛行できるという段階に持っていかなければいけないでしょう。そうした姿をアピールしたい」

「まずは離島や山間部でドローン物流の実績を積んでいくということになるのではないか。ドローンというとラストワンマイルの印象が強いですが、実際にはBtoBの場面でも物流への活用が期待されています。機体をより大型化して荷物を効率良く運びたいとの要望も出ていますので、そうなってくると先ほどお話しした認定スクールで操縦の技術を教えることがより重要になってきます」

―ドローンは地方で実用化への期待が高まっています。地方自治体との連携についてはどう考えていますか。

「こちらもお問い合わせがあれば連携してさまざまな活動を行っています。協力できるところはやるというスタンスです。昨年は水害が多かったので、今後はドローンで上空から被災状況を把握したり、緊急の支援物資を運んだりするために地方自治体への普及が本格化するのではないかとみています。そのためには自治体自身がドローンを使える人材をきちんと育てていく必要がありますから、その面でもJUIDAがご協力できることはあると確信しています」

(藤原秀行)

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