大日本印刷、フィリピンでデジタル技術活用したラストワンマイル低温物流変革の実証事業

大日本印刷、フィリピンでデジタル技術活用したラストワンマイル低温物流変革の実証事業

デジタル配送管理システムでコールドチェーン普及と雇用創出の可能性を検証

​大日本印刷(DNP)は3月9日、フィリピンで今年2月、ラストワンマイル領域のコールドチェーンを対象に、DNPが開発したデジタル配送管理システムと冷蔵・冷凍車に比べて低コストで導入可能な「DNP多機能断熱ボックス」を掛け合わせた物流サービスの実現性、市場受容性を検証する実証事業を実施したと発表した。

国土交通省の「デジタル技術を活用した物流最適化に資するソリューションの海外展開支援に係る調査検討業務」として行った。

近年、フィリピンは新型コロナウイルスの影響などでオンラインショッピングの利用が増加して宅配の需要が高まっている。同時に物流の課題が顕在化しているため、DNPは今回の実証事業でDNPは以下の3つの課題を設定し、解決に取り組んでいる。

まず、配送事業者の多くが配送指示を紙や電話といったアナログな手段で管理しているため、リアルタイムでのドライバーの配送状況把握が難しく、荷主の問い合わせに即時に対処できない。また、冷蔵・冷凍車による配送が高価なため、一部のスーパーやコンビニエンスストアなどを除いてコールドチェーンが普及していない。

さらに、巣ごもり消費などで配送需要が高まり、物を配送するドライバーが不足する一方、屋外の人流が減りトライシクル(タクシー)ドライバーの仕事が減少、収入機会が失われている。

そこで、実証事業はDNPがユニアデックス、Global Mobility Serviceと2022年に設立した合弁会社3Q Dash Technoloxが運用するDNPのデジタル配送管理システムを活用。アナログで管理していた配送指示をWeb上での管理に移行する。

配送ドライバーや荷主とのコミュニケーションは、従来のSMSや電話などに代わって専用のスマートフォンアプリで行う。ドライバーは業務進捗状況の更新をアプリで行い、管理者はWeb上のダッシュボード画面でドライバーの位置情報と業務進捗を確認することでリアルタイムに配送状況を把握できる。配送ミスを削減し、配送時間の短縮につながるとみている。


デジタル配送管理システム(左:配送ドライバーのスマートフォン画面 右:Web画面)

また、DNP多機能断熱ボックスは高断熱性能を有し、電源を使うことなく内部の温度を長時間、一定範囲に保つことが可能。生鮮食品や医薬品など、温度管理が必要な荷物の配送を視野に入れ、今回の実証事業では冷凍食品を配送した。

冷蔵・冷凍車のチャーターと比較し、より低コストでの温度管理が可能なため、これまで費用面が課題となって常温商品しか扱えなかった小規模な小売店などへの冷蔵・冷凍食品の配送が可能になると見込んでいる。


配送の様子(左:配送ドライバー 右:DNP多機能断熱ボックス)

デジタル配送管理システムを活用して配送業務を簡易化し、人を輸送していたトライシクルドライバーへの効率的なリスキリング(学び直し)を展開。物の配送ドライバーとしての業務を可能にすることで、雇用と労働機会の創出を図る。

【実証事業の概要】
○実施時期 : 2023年2月10日(金)~24日(金)
○実施場所 : フィリピン、マニラ首都圏および近郊
○協力パートナーと担当内容 :
株式会社YCP Solidiance : 市場調査
3Q Dash Technolox, Inc. : ケーススタディ現地調査、マネジメント
Global Mobility Service Philippines (以下GMS Philippines) : 配送ドライバー・車輌手配等

今回の実証事業では、配送管理の効率化、任意の温度帯を長時間保った配送および、配送業務が未経験のドライバーの業務への適応といった一定の成果が得られた。将来は食品や医療品などを安全に最終目的地まで届けられる安心かつ高品質なコールドチェーンの普及・浸透と、当該市場における新たな雇用創出につなげていくことを目指している。

また、今回フィリピンにおける実証事業で得られた結果を基に、今後市場適応性などを検討しながら東南アジア地域の各国(ベトナム、インドネシアを想定)への水平展開も視野に入れる。

(藤原秀行)※いずれもDNP提供

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