政府の有識者会議が中間報告のたたき台策定
政府は4月10日、日本での外国人の労働の在り方を議論する「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」(座長・田中明彦国際協力機構理事長)を開催し、これまでの議論を踏まえた中間報告書のたたき台をまとめた。
今後の方向性として、実習生への賃金不払い頻発などの人権侵害や失踪といった問題を多く抱えている現行の技能実習制度を廃止し、海外からの人材確保・育成のための新たな制度を設けることを盛り込んだ。
有識者会議は今年の春に中間報告、秋に最終報告をまとめる予定。
技能実習制度は1993年に開始。機械加工や農業などの職種で外国人の雇用を認めている。目的は外国人に働きながら日本の技術を学んでもらうことで、途上国に技術移転する国際貢献を掲げているが、実際には企業側が安い労働力として悪用するケースが後を絶たず、実習生への賃金不払いや実習生自身の失踪といった問題が多発。目的と実態がかけ離れているとの批判が強い。
たたき台は技能実習制度に関し「技能実習生が国内の企業等の労働力として貢献しており、制度目的と運用実態のかい離が指摘されていることにも鑑みると、今後も技能実習制度の目的に人材育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受け入れを続けることは望ましくない」と指摘。人材育成機能は維持しながら、人材確保も制度目的に加え、実態に即した制度にするよう提言した。
また、従来は原則として認めていなかった、技能実習生が働く企業を変える「転籍」に関し、規制を緩和して一定程度可能にすることを打ち出している。
さらに、技能実習生の受け入れを仲介する「監理団体」に関し、技能実習生を受け入れた企業が適切に運営しているかどうかを十分チェックしないなど、問題が相次いでいることを受け、要件を厳格化するとともに、送り出す側の機関に関しても悪質な事業者を排除するため、日本と相手国で実効的な二国間の取り決めを策定するなど対応を強化するよう求めている。
(藤原秀行)