宇宙スタートアップで国内初上場果たしたispace・袴田CEO、商用化に意欲
月面へ物資を輸送する「ペイロードサービス」の商用化を目指しているスタートアップのispace(アイスペース)の袴田武史CEO(最高経営責任者)は4月12日、東京証券取引所グロース市場へ同日上場を果たしたのに伴い、東証内で記者会見した。
袴田CEOはペイロードサービスの商用化に向けた取り組みの一環として、昨年12月に打ち上げ成功し現在は月面を目指している着陸船が早ければ4月26日未明に月面へ到着すると見通しを示し、「十分着陸できる可能性がある」と自信を見せた。
また、「宇宙に人間の生活圏を築いていきたい。まずは地球と月の間で1つのエコシステムを作っていく」と述べ、事業のビジョンとして、2040年以降は月面に1000人以上が居住し、年間1万人が地球と月の間を行き来するとの世界を構想していることに言及。ペイロードサービスを確立することで、月を足掛かりとして火星などより先の宇宙へ進出していける世界を実現していきたいと夢を語った。
会見する袴田CEO
将来は6兆円超の市場予想も
宇宙開発関連のスタートアップが上場するのは国内で初めて。袴田CEOはペイロードサービスに関し「月(開発関連)の政府予算が欧米や日本で大きく伸び始めており、大きな事業として見込める。われわれがビジネスとする小型輸送のセグメントでも2036~40年にかけて年平均で500億ドル(約6兆5000億円)以上の市場になると予測されている」と展望。
Ispaceとしても、ペイロードサービスで25年以降にNASA(米航空宇宙局)の荷物を月面に輸送する契約を獲得するなど、政府や民間企業の輸送需要を開拓しており、MOU(覚書)などを含めて10カ国で3億8000万ドル(約500億円)の契約を獲得済みと明らかにし、成長の可能性が大きいとアピールした。
月面にあると見込まれている水を活用することでロケットの燃料を生み出せるようになり、宇宙にガスステーション(供給施設)ができれば輸送コストを大きく下げられると予想した。
収益基盤強化のため、ペイロードサービスに加え、自社のランダー(月面着陸船)やローバー(月面探査車)を使い月面の様々なデータを収集、研究機関などに販売する「データサービス」、ランダーやローバーにロゴを掲載して宣伝活動を支援したり、技術開発などで協業したりする「パートナーシップサービス」にも注力していく方針を強調した。
会見に同席した野﨑順平CFO(最高財務責任者)は、ペイロードサービスで契約を着実に積み重ねることなどにより、今後数年以内の黒字化を目指していく姿勢をアピールした。
撮影に応じる袴田CEOと野﨑CFO
(藤原秀行)