LIXILとPwC、AI活用した建材需要予測の試験運用開始

LIXILとPwC、AI活用した建材需要予測の試験運用開始

120万機種のほぼ全てをカバー可能に

LIXILとPwCコンサルティングは4月27日、PwCのAI・機械学習アルゴリズムを用いた次世代型需要予測ソリューション「Multidimensional Demand Forecasting(MDF)」を導入し、サプライチェーン全体の最適化に向けた取り組みの一環として、サッシ・ドアやエクステリアなどの建材事業を展開するLIXIL Housing Technologyの約120万機種におよぶ製品を対象としたAI需要予測の試験運用を開始したと発表した。

昨年9月にハウジングテクノロジー事業の約半数を占める既存品の予測値を先行展開。今年1月にはこれまで予測できなかったモデルチェンジ品についても対応し、LIXIL Housing Technologyのほぼ全ての製品をカバーする予測値の算出が可能になったという。

LIXILは急激な事業環境の変化に柔軟かつ機動的に対応するため、業務のDXを加速。より顧客志向の組織へと転換するとともに、生産体制とサプライチェーンの最適化を図っている。

これまでにも消費者の多様なニーズに対応するため、多品種の生産基盤を構築し、事業生産性向上やブランド競争力向上に取り組んできたが、資材調達リスク、コンテナ不足など世界的なサプライチェーンにおける問題が発生し事業環境が大きく変化する中、多岐に渡る製品コードを人の手を使って需要予測をすることは困難なのが実情。

そこで、先に起きる事態を予見し、迅速な対応が可能な体制を構築していく必要があると判断。調達から製造、販売までの各プロセスにおける状況を把握し、在庫管理や業務運営の効率化などサプライチェーン全体を最適化するため、AI需要予測ソリューションを採用した。

ハウジングテクノロジー事業は製品で約120万機種、販売エリア別に展開したSKU(最小管理単位)で230万を超える非常に大きな規模のため、細かい粒度で需要の動きや特徴を捉えることは難しい。様々なサプライチェーンリスク(欠品・リードタイム延長・過剰在庫・廃棄コスト・横持ち輸送コストなど)を低減することが喫緊の課題だった。

AI需要予測を活用することで、230万の予測対象それぞれの特徴を捉えた高解像度かつ高精度な予測算出を実現。膨大な予測データを提供する環境構築にはLIXILの様々なデータを一元管理するクラウド型のデータ統合基盤「LIXIL Data Platform」を利用し、各工場でデータ活用の自走化を促すためのデジタルスキル支援も並行して進め、多くの工場で潜在リスク低減に向けた実用化レベルの取り組みが加速している。

今後は、製品にとどまらず、副資材なども含め、需要予測の対象領域をさらに拡大していく予定。

■AI需要予測の展開事例
例:エリア別予測精度向上による 横持ち輸送コストを抑制
高解像度な予測によって、エリア別の予測精度の向上に貢献。海外で生産する製品は、海外の生産拠点から日本国内の全国6エリアの物流センターへ向け、SKUごとの適切な数量を船輸送することで、無駄かつ高コストな日本国内での横持ち輸送発生を抑制。2023年1月、タイ工場、ベトナム工場、中国大連工場から中四国エリアの岡山物流センターに輸送する対象SKUの見直しにMDF予測値を活用。今後は、年3回実施する全エリアの定期見直しにも展開していく予定。

例:需要予測対象の広さによる 手動対応(=業務コスト)の削減
MDFは、定番・量産品のみならず、特注品や少量品(=ロングテール品)も需要予測可能で、モデルチェンジ(旧モデルの終息、新モデルの立ち上がり)にも対応。機械的アプローチが可能になり、人手による手動対応が必要な範囲が極小化。この機会に、特定の従業員に頼っている計画業務を標準化し、業務の属人化を解消するとともに効率化を進め、さらに浮いた工数を、欠品・過剰在庫・横持ち輸送コストといった潜在リスク低減活動に振り向けるという、好循環を促す予定。
また、様々なモデルチェンジのパターンへ対応しており、旧モデルの終息に向けた需要の動きを正確に捉えることで、滞留在庫および廃棄コストの発生を抑制するとともに、納品リードタイム延長を防ぐ。

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事