航続距離600km、幹線輸送などに投入
アサヒグループジャパンと西濃運輸、日野自動車などが出資するNEXT Logistics Japan(NLJ)、ヤマト運輸は5月17日、持続可能な物流を実現するため、水素を使用し、稼働中に温室効果ガスを出さない燃料電池(FC)大型トラックの走行実証を5月に順次開始すると発表した。
FC大型トラックの走行は、日本で初めて。
FC大型トラック(各社提供)
国内商用車全体の温室効果ガス排出量は、全体の約7割を大型トラックが占め、特に幹線輸送に使われる大型トラックは十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められるため、エネルギー密度の高い水素を燃料とする燃料電池システムが有効だと自動車業界などで期待されている。
トヨタ自動車と日野自動車が共同で開発したFC大型トラックを、各社の実際の輸送業務に投入。水素燃料活用の可能性と実用性の検証を進める。航続可能距離は約600km。環境性能と商用車としての実用性を兼ね備えている。
このうち、ヤマトグループは5月17日、東京都大田区の主要拠点「羽田クロノゲート」内で実際に投入するFC大型トラックをメディアにお披露目した。
ヤマトグループは「2050年温室効果ガス自社排出量実質ゼロ」「2030年温室効果ガス排出量48%削減(20年度比)」を目標に掲げ、30年までにEV(電気自動車)2万台導入、太陽光発電設備810基導入、ドライアイス使用量ゼロの運用構築、再生可能エネルギー由来電力の使用率を全体の70%まで向上という主要施策を中心に、各取り組みを展開している。
FC大型トラックの走行実証を5月17日夜から数カ月間にわたり、幹線輸送で実施、早期の実用化を狙う。
ヤマトが利用するFC大型トラック
高圧水素タンク
各社の輸送内容は以下の通り。
アサヒグループ・NLJ
実証開始日:2023年5月19日(金)~
アサヒビール茨城工場(茨城県守谷市)でビールや清涼飲料を積み込み→アサヒビール平和島配送センター(東京都大田区)で洋酒やワインなどを積み込み→NLJ相模原センター(神奈川県相模原市)で荷降ろし→関西からの荷物を積み込み→アサヒビール茨城工場へ戻る
西濃運輸
実証開始日:2023年6月~
東京支店(東京都江東区)近隣の水素ステーションで燃料充填→東京支店で荷物を積み込み→小田原支店(神奈川県小田原市)で当該支店分を荷降ろし→相模原支店(神奈川県相模原市)で当該支店分を荷降ろし→東京支店へ戻る
ヤマト運輸
実証開始日:2023年5月17日(水)~
羽田クロノゲートベース(東京都大田区)近隣の水素ステーションで燃料充填→羽田クロノゲートベースで荷物を積み込み→群馬ベース(群馬県前橋市)で荷降ろし→群馬ベースで荷物を積み込み→羽田クロノゲートベースへ戻る
実証実験では実稼働の際、ドライバーにとって使い勝手が良いかどうかを確認。水素ステーションでの充填時間を含む運行管理が効率的かどうかもチェックする。
車両に関しては、燃料電池システムと電動システム全般の作動検証、環境や走り方の違いによる水素消費変化の把握と水素ステーションでの給水素情報の取得、ドライバビリティ(車両の運転操作性)や使い勝手全般に関する情報の取得を目指す。
(藤原秀行)