中国の「ゼロコロナ」政策終了などプラスに、22年から減速のシナリオは変わらず
世界銀行は6月6日、世界経済の成長予測を更新した。
2023年の世界全体の実質経済成長率は2.1%で、今年1月に公表した1.7%から0.4ポイント上方修正した。中国が新型コロナウイルス感染拡大防止のために講じてきた強力な「ゼロコロナ」政策を終え、経済活動が正常化してきたことや、米国などの主要国の経済が想定より力強かったことなどを反映させた。
ただ、22年の3.1%からは減速するとの基本的なシナリオに大きな変更はない。欧米各国がインフレ抑制のため金利引き上げを継続していることが引き続き、経済成長に影響する見通し。24年の予想についても、従来の2.7%から0.3ポイント下方修正し2.4%に変更した。
世界銀行グループのアジャイ・バンガ総裁は「貧困を削減し、繁栄を広める最も確実な方法は雇用であり、成長鈍化は雇用創出を非常に困難にする」と懸念を示した。
インダーミット・ギル首席エコノミスト兼上級副総裁は「2023年の貿易の伸びは、パンデミック前の数年間の3分の1以下のペースになると予想される。新興国や開発途上国は金利上昇により債務圧力が高まっている」と述べ、先進国の利上げが新興国や開発途上国に大きな影響をもたらしていると指摘した。
主要国・地域別の成長予想を見ると、米国が23年は1.1%で、従来値の0.5%から引き上げた半面、24年は1.6%から半減の0.8%へ引き下げた。
中国は23年が4.3%から5.6%に大きく上方修正したものの、24年は5.0%から4.6%へ引き下げた。
ユーロ圏は23年が従来の横ばいから0.4%へとプラスの見方に修正した一方、24年はマイナス0.3%と厳しい見方を示している。
日本は23年が1.0%から0.8%へ下方修正。24年は0.7%の従来値を据え置いた。
(藤原秀行)