両社長が会見
ZMPの谷口恒社長とドローン開発を手掛けるエアロセンスの佐部浩太郎社長は7月20日、ZMPが東京都内のお茶の水女子大学で開催したイベント「ZMP World2023」で記者会見し、ドローン物流の普及加速へ引き続き連携していく考えを示した。
ZMPは同日、自社で独自に開発した、多様なロボットを複数台、同時に効率良く運行させるオペレーション管理システム「ROBO-HI(ロボハイ)」と新たにドローンの連携を可能にしたと発表。長距離輸送はドローンが、各戸へのラストワンマイル配送は宅配ロボットがそれぞれ担ったり、広範囲の空からドローンが計測して地上での計測や作業はロボットが担当したりといった、複数のドローン・ロボットを連携させた統合的なオペレーションを実現できると説明している。
両社長はROBO-HIを生かし、ZMPの宅配用ロボットとエアロセンスの大型ドローンを組み合わせることなどを想定していると強調。ドローン物流の着実な普及に自信を見せた。谷口社長はドローン物流に関し、医薬品など付加価値の高いものの取り扱いが最適との見解を示した。
会見後の撮影に応じるZMP・谷口社長(左)とエアロセンス・佐部社長
最大150km飛行可能な次世代VTOL開発に着手
谷口社長は2019年までエアロセンスの代表取締役も兼務していた。会見で谷口社長は、日本郵便やACSLと連携し、21年12月に東京・奥多摩町でZMP製宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」とACSLのドローンを組み合わせ、山間地の住宅へ荷物を自動で届ける実験を行ったことに言及。
ドローンはトラックに比べて最短距離で目的地まで飛べることなどが利点と強調し、山間地でのドローン物流拡大の意義をアピール。将来はZMP以外のロボットとドローンが連携し、ROBO-HIも活用して「これまでにないサービスを提供していくことも考えている」と述べた。
エアロセンスが22年に日本無線と資本・業務提携したことにも触れ、先進的な無線通信技術も活用し「日本の全国土をカバーできる」と指摘。医療機関と連携し、ドローンで医薬品を緊急輸送することも可能との見方を示した。
佐部社長は「ドローン物流は(ドローン)市場の中で最後に来る大物と捉えている。この後の成長率が最も高く、規模も何十年もかけて大きくなっていくだろう」と指摘し、注目している領域と強調。
エアロセンスとしてもマルチコプター(複数翼)とVTOL(垂直離着陸機)の両方で、食品の個人宅配送などの実証実験を各地で展開してきた歩みを紹介した。VTOLの「エアロボウイング」は巡航速度が時速70m、飛行時間は40分、航続距離は50kmを確保していることを明らかにした。
さらに、より長距離の飛行が可能な次世代の新しい大型VTOL開発を決定したこともあらためて公表。2年後の完成を目指し、最大飛行距離は現行の3倍の150km、最大積載可能重量も10倍超の10kg以上など、性能を高めていく構想を披露した。その上で、新しいVTOLは、ドローンが市街地上空で目視外飛行できる「レベル4」に対応した「第一種型式認証」を取得し、インフラ点検や緊急時の長距離物資輸送を可能にしたいとの考えを明らかにした。
次世代VTOLのイメージ
佐部社長は「ドローンから物をドロップして、地上のロボットと連携していく世界に、われわれもようやく追い付いてきた。いろんなところで(ZMPと)ご一緒できる機会が増えていくのではないか。そうした将来を楽しみに待ちたい」と期待をのぞかせた。
(藤原秀行)