9月以降は走行速度アップなどにチャレンジ、23年度内の完了予定
JFEスチールは8月1日、グループの物流を担うJFE物流、川崎重工業グループで建設機械メーカーのNICHIJO(ニチジョウ)と連携し、JFEスチール西日本製鉄所(岡山・倉敷地区)の構内で自車位置認識センサーなどを搭載した大型特殊車両(キャリアパレット車)による鋼材自動搬送の基本機能開発を完了、今年から実証実験を開始したと発表した。
JFEスチールは将来のドライバー不足への対応や労働環境改善を目的として、2018年に鋼材搬送の自動化技術に関する研究開発を開始した。
製鉄所構内の鋼材搬送はパレットと呼ばれる台車を使用しているが、パレットには薄板コイルなどの鋼材を多数個積載することが可能で、キャリアパレット車はパレットを背負うような形で搬送する大型特殊車両。トレーラーが一度に搬送できる貨物量が20t程度なのに対し、キャリアパレット車は最大160tと効率的な搬送が可能で、各工程間の輸送から出荷まで工場内の物流で重要な役割を担っている。
開発している自動搬送は、GNSS(衛星測位システム)の衛星情報とLiDARなどの高性能センサーにより自車の位置を認識し、あらかじめ設定したルートを自律的に無人走行する仕組み。
キャリアパレット車とパレット
キャリアパレット車は、パレットの下に潜り込むようにして積載するため、一般的なトレーラーよりも広い330cmの車幅を、パレット脚部とのわずか10cm程度の隙間で安全に自走する必要がある。さらに、100tを超える貨物の重量によりタイヤ外周の変化が生じると、移動距離の計算にも影響を及ぼす。こうした特有の課題に対し、自動搬送システムにおける自車位置認識の精度を高度化することで、スムーズな積載と走行を実現している。
既にキャリアパレット車での設定ルートに沿った直進・右左折・停止、パレット積載・搬送といった基本的な機能に関する連続自動動作の技術開発が完了し、今年1月に構内の実環境ルートの一部で不特定多数のパレットを用いた実証実験を始めた。
本実証実験は、製品出荷における自動化と生産性向上を目指して取り組んでおり、今年9月からは走行速度アップなどの性能向上を段階を進め、2023年度内の実験完了を予定している。
今後、実証実験の成果を生かし、自動搬送車両が走行するルートの周辺環境の安全装置についても実装に向けた運用設計を行い、自動搬送車両を稼働できる環境整備を図る。将来は新技術を活用し、自動搬送ルートの拡大を計画している。
キャリアパレット車の連続動作(いずれもプレスリリースより引用)
(藤原秀行)