「総合物流企業」進化へセンター開発や海外展開も推進
JR貨物がこのほど発表した「中期経営計画2023」によると、最終期の2023年3月期における連結業績は売上高2120億円以上、経常利益140億円以上、売上高営業利益率7.8%以上、総資産利益率3.0%以上、自己資本比率27.0%以上――を目標に掲げている。いずれも17年3月期実績を上回り、鉄道貨物輸送を基軸とした総合物流企業グループへの進化によって収益性向上と持続的な成長を図る方針だ。5カ年の設備投資額は合計2080億円で前中計から約500億円を上積みしている。
総合物流企業化に向けては▽顧客への最適ソリューションの提供▽物流施設「東京レールゲート」の建設およびテナントリーシング推進▽子会社なども含めたグループが保有するアセット、リソースの活用によってトラック・倉庫・物流周辺事業(機材リースなど)を融合させたサービスの拡充▽駅ナカ倉庫、駅チカ倉庫、積み替えステーションの建設・運営を通じた使いやすい鉄道コンテナ輸送の実現――を具体的施策に挙げる。
土台となる物流企画はJR貨物、鉄道輸送ではJR貨物と全国の臨港鉄道、また日本フレートライナーおよび全国通運、全国のロジスティクス会社による利用運送、倉庫など付帯施設による保管・荷役・流通加工・梱包・包装、情報管理は日本運輸倉庫や大阪鉄道倉庫、日本オイルターミナル、リースならびに資金・資材調達ではジェイアールエフ商事、不動産物件の開発・管理はジェイアール賃貸・不動産開発がそれぞれ手掛ける。これらを組み合わせた最適な物流ソリューションのワンストップ提供とサービスラインの拡充を目指す。
マーケティング戦略ではEC拡大とBtoC取引の増加を想定した積み合わせ貨物、少子高齢化の進展においても堅調な需要と物量が見込まれる加工食品(食料工業品)、公共工事に伴い発生する建設残土をコンテナ輸送する静脈物流など、今後の社会情勢を踏まえた戦略的な営業活動を推進。新規需要の開拓では隅田川駅(東京)にて展開する列車の返送輸送力と貨物駅構内の倉庫、積み替え施設を有効活用した複数顧客による共同輸送の全国展開を模索する。
タイとインドで事業化への取り組みを加速
一方、海外事業への取り組みでは15年1月からタイ、18年8月からインドでそれぞれ事業化調査などを実施。前者では12フィートコンテナによる貨物列車の試験輸送、12フィートコンテナとタンクコンテナの需要調査を行った。今後は事業の実現に向けてタイ国鉄と協議を続けていく。
後者は鉄道での完成車輸送について事業化調査を進めており、提案した専用コンテナとパレットでの鉄道輸送モデルが具体化しているという。このほかミャンマー、マレーシア、ベトナムでの展開も検討。物流インフラの未整備やトラック輸送でボトルネックを抱えるアジア諸国での事業化を視野に入れている。
設備投資の使途内訳は「東京レールゲートEAST」および「東京レールゲートWEST」新設、車両所の老朽化対策と生産性向上を目的とする大規模改修、賃貸用不動産の購入に見られる“成長・戦略投資”に980億円、機関車と貨車の更新・改良、コンテナおよび荷役機器の新製、土木・老朽電気設備のリプレース、鉄枕木交換の“維持・更新投資”には1100億円を充当する。
(鳥羽俊一)
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