宅配の3温度帯活用、業務最適化図る
「牛角」「かっぱ寿司」「大戸屋ごはん処」などの外食チェーンを展開するコロワイドとヤマト運輸は9月19日、コロワイドグループの給食事業拡大に向け、ヤマトの3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)物流ネットワークを活用した新たな物流スキームの運用を9月15日に開始したと発表した。
コロワイドは同事業で食材などの出荷業務を、ヤマトの3温度帯に対応したターミナル一体型物流施設へ順次移管。将来の出荷キャパシティ拡大へ柔軟に対応できる出荷・納品体制の実現や、安定的な輸送力確保を果たし、事業成長の地盤を強固にしたい考え。
物流業務をサプライチェーン全体で最適化することにより、温室効果ガス排出量の削減や、納品時間変更による給食提供先の生産性向上にもつなげることを目指す。
2024年3月までに、コロワイドグループの全ての給食提供先で、新しく構築した物流スキームへ切り替えを完了させる。両社の知見やノウハウを生かし、外食事業におけるチャレンジ店舗(今後の事業拡大や市場マーケティングを目的とした小規模展開店舗)や郊外店舗への物流効率化や、個人向けECと外販事業の展開、今後さらに拡大が見込まれる海外事業など、給食事業だけにとどまらない幅広い事業領域への展開を検討する。
コロワイドグループは外食産業を取り巻く事業環境の変化を考慮し、主力の外食事業に加えて給食事業の拡大にも注力。特に、生産年齢人口減少による市場縮小が懸念される国内市場では、引き続き堅調な需要が見込める「高齢者給食事業」の拡大を見据え、事業ポートフォリオの変革を進めている。
コロワイドグループのマーチャンダイジングを統括するコロワイドMDとヤマトは今年3月、外食産業を取り巻く事業環境の変化に対応した持続可能なサプライチェーンの構築に向け、リードロジスティクスパートナー(LLP)協定を締結しており、今回の取り組みはその第一歩と位置付けている。
これまでコロワイドグループの給食事業の物流は、外食事業を中心としたサプライチェーンの中で展開していたが、給食事業と外食事業は給食受託先や店舗への納品時間や頻度、場所などが異なるため、給食事業拡大に際しては、多様な輸配送ニーズへの対応が課題となっていた。また、納品先によっては積載量が少ないチャーター輸送が必要になることもあり、今後トラックドライバー不足が深刻になることが確実な中、安定した輸送力の確保も迫られていた。
新しい物流スキームの概要
(1)出荷キャパシティの拡大
ヤマト運輸の3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)に対応したターミナル一体型物流施設と宅配ネットワークを活用し、拡大する給食事業でも多頻度小口配送による多様な輸配送ニーズへの対応と、安定した出荷・納品を実現。拠点にとらわれない給食提供先の拡大が可能になると見込む。
(2)持続可能なサプライチェーンの構築
積載量が少ないチャーター輸送から、宅配ネットワークを活用した輸送に切り替えることで、輸送効率が向上し、輸送における温室効果ガス排出量の削減に寄与するとともに、安定した輸送力の確保も実現できると期待している。
(3)納品時間の変更による給食提供先の生産性向上
食材の納品時間が、使用する当日の早朝(6~7時)から使用する前日の日中(14~16時)へ変わることで、比較的業務に余裕のある時間帯に食材の納品・検品が可能となる。当日分の調理や翌日分の仕込みの時間がさらに確保できるため、給食提供先の生産性向上につながるとみている。
給食提供先スタッフの生産性向上イメージ
両社が目指すサプライチェーンの全体像(いずれもコロワイドとヤマト運輸提供)
(藤原秀行)