検知器で酒気帯び確認の義務化など考慮、クラウド型運行管理サービス活用働き掛け
パイオニアは、自社の従業員や荷物を運ぶ「白ナンバー」の車両を使っている事業者のサポート強化に乗り出している。
2015年に提供を開始したクラウド型の運行管理支援サービス「ビークルアシスト（Vehicle Assist）」で、白ナンバー事業者を対象としたアルコール検知器による運転者の酒気帯び確認義務化などの動きを考慮し、機能を拡充。より安全運行の管理を効率的に行えるようにし、酒気帯び運転の防止に効果を挙げられるようにしている。
同社はビークルアシストを駆使することで、白ナンバー車両を一定程度抱える事業者に選任が義務付けられている「安全運転管理者」の負荷を軽減できるとメリットを強調。利用を幅広い業種に働き掛ける構えだ。
また、同社が独自に実施したアンケート調査で、昨年4月に義務化された白ナンバー車両使用事業者のアルコールチェックについて、実施率が5割台にとどまったことなどを考慮。検知器使用義務化を契機に、アルコールチェックだけにとどまらず、安全運転確保のための運行計画作成など安全運転管理者が負うべき役割をあらためて事業者に周知を図り、飲酒運転防止への貢献を目指す。
スマホでアルコールチェック結果撮影すれば自動でデータ反映
ビークルアシストはカーナビゲーションシステムやドライブレコーダーなどを用いて業務車両の動態管理や業務指示、危険運転の把握など高度な運行管理・支援を行えるのが特徴。導入実績は1100社以上に及んでいる。
2021年に千葉県八街市で飲酒運転の大型トラックが下校途中の小学生の列に突っ込み、5人が死傷した事故で、このトラックが白ナンバーだった上、ドライバーが所属していた事業所が飲酒運転を行っていなかったことが発覚。警察庁は再発防止へ規制強化に踏み切っており、昨年4月には白ナンバー車両を使用する事業者の酒気帯び有無の確認と記録保存を義務化。さらに、今年12月にはアルコール検知器を使った酒気帯び確認の義務化も控えている。
安全規制強化の動きを踏まえ、ビークルアシストは昨年9月、新たにアルコール検知器と連携できる機能「スリーゼロ for ビークルアシスト」の提供をオプションで開始した。シャープのグループ企業でIoTシステムの開発などを担うAIoTクラウド（東京都江東区豊洲）のアルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」を組み込み、40機種以上のアルコール検知器に対応できるようにしている。
専用アプリケーションをインストールしたスマートフォンでアルコール検知器の検査結果を撮影、送信すれば光学式文字読み取り装置（OCR）で画像を認識し、データをビークルアシストへ自動的に反映・登録する。撮影したドライバーの顔写真も同時に送信し、なりすましを防ぐ。
ドライバーからの報告や車両管理担当者の記録などの業務負荷を減らし、より厳格なアルコールチェックができる環境を整えるのが狙いだ。ビークルアシストで自動作成する運行日報や月報への記録など、車両管理データとの連携・一元管理も可能にしている。
（パイオニア提供）
アルコール検知器を使った酒気帯び確認の義務化は当初、昨年10月からを予定していたが、世界的な半導体不足などでアルコール検知器を十分そろえられない恐れが出てきたため、警察庁はいったん延期。あらためて今年12月1日付の施行を決めた。パイオニアは新機能のニーズが今後さらに高まるとみて、利用を事業者に幅広く提案していく考え。
パイオニアが今年2月に実施した、社有車を5台以上所有する白ナンバー事業者で、車両運用管理を担当した経験がある150人を対象にしたアンケート調査では、実際に行っている安全運転管理業務について、「アルコールチェック」の実施率が最も高かったものの、55.8%と全体の約半数にとどまり、「日々の安全運転始動」も4割、「ドライバーの点呼」「運行計画の作成」「交通安全教育の実施」なども3割だった。併せて、約4割の事業者がアルコールチェック業務を負担に感じていることも浮き彫りとなった。
同社でビークルアシストなどのサービスを担当するモビリティサービスカンパニーPM&マーケティング統括Gマーケティング課の大野耕平課長は「安全運転管理者が果たすべき役割について、理解が十分広まっていない実態が浮かび上がった。どうしてもアルコールチェックの部分が注目されるが、それ以外にも運転日誌の記録やドライバーへの安全運転指導などの重要な役割を担っている。ビークルアシストの活用などを通じ、あらためて安全運転管理者を配置する意義について理解が広まるよう、当社としても尽力していきたい」と強調している。
（藤原秀行）
