倉庫DXのスモールスタートを可能にして
運用からデータ活用、最適化まで伴走する
Interview KURANDO 岡澤一弘 代表
「Logimeter(ロジメーター)」の導入拠点数が正式リリースから2年余りで400を突破した。手書きの作業報告書と表計算ソフトによる管理に見切りを付け、DXに踏み出す現場が日を追うごとに増えている。ツールの導入プロセスや活用方法などのノウハウの蓄積と機能の拡充も進んでいる。 (本誌編集部)
大手ユーザーの横展開が本格化
──岡澤代表はWMSベンダーのダイアログを立ち上げて事業を軌道に乗せた後、2019年にKURANDOを創業しています。WMSから倉庫の見える化に照準を移した背景は?
「WMSを提供していると、パッケージであっても多くの場合、カスタマイズを要求されます。とりわけ現在のロジメーターの機能、すなわち庫内作業の見える化や生産性の管理、収支管理などに必要なデータは、WMSのデータとは構造が違うので、事前にパッケージに組み込んでおくことがまずできない。後付けすればとても高くついてしまう」
「それでも倉庫をきちんと運営しようとすれば必要になる機能なので、そのために庫内作業員に業務内容を報告させて、管理担当者が表計算ソフトで自己流の表を作って管理している現場が多かった。どこの倉庫でも同じようなことをしていたので、これは明らかに無駄だなあ、と。それが出発点でした」
「もっと現場に負担をかけない方法で作業ログをとり、そのデータをすぐに活用できるツールがあれば、みんなの仕事が楽になります。機能的にも手作りのファイルより格段に優れたものにできる。個別ユーザー向けの開発を極力排除した、標準化されたクラウドサービスに挑戦したいという気持ちもありました」
──KURANDOの創業からロジメーターのリリースまで2年近くかかっています。
「ベータ版は完全に失敗しました。ニーズを聞き出し、リアルタイムの進捗管理ができるシステムを開発して、ユーザーに見せても感触は上々。ところが、トライアルの段階になると話がストップしてしまう。何が問題なのか改めて検討した結果、運用の難易度が高すぎるという結論に至りました。そこでバージョン2を開発して、もっと柔軟に運用できる仕組みにしました。これはトライアルでも評価されて『導入する』とも言ってもらえた」
「しかし、もう一つ読み違いがありました。ロジメーターは庫内作業の見える化ツールですから、センター長の決裁で現場単位で利用されることを想定していたのですが、実際には大手企業の本社側からの引き合いが強くて、『全社展開してトータルで見たい』とか、『ベンチマーキングしたい』という。その要望に応えるために部分的にプログラムを修正すると、利用者が増えていった時にサーバーの負荷が大きくなりすぎてしまう。結局、バージョン2を破棄して、基本設計から作り直すことになりました」
「しかし、この試行錯誤のおかげでロジメーターを、作業を計測することがメインの既存のサービスとは明確に差別化することができました。21年4月の正式リリース以降はスムーズに普及が進んでいます。無料トライアルを実施した後の正式採用率は約87%、利用1年以上の継続率は約95%に達して、導入拠点数は月を追うごとに増えています。大手ユーザーの横展開も本格的に始まりました」
ロジメーター稼動センター数
──大手にも広く受け入れられた理由をどう分析していますか。
「在庫管理や出荷伝票の出力などの業務は、WMSによって既に多くがシステム化されています。しかし、作業員や業務の管理はいまだにアナログが中心です。デジタル化すれば大きな効果が期待できると分かってはいても、初期投資が高額だったり、導入コンサルが必要になったりする。倉庫のDXをしたくても、改善効果を重ねながら研究投資を継続していける企業となると、大手であっても一握りです。それに対してロジメーターは、初期投資の要らないクラウドサービスなので、スモールスタートして運用を重ねながらステップアップしていける。無理せずDXを進められます」
次は勤務シフトの最適化
──実際に導入が広がって初めて分かってきたことはありますか。
「例えば伊藤忠商事のケースでは、現場の人たちが作業データを取ることを歓迎している姿が印象的でした。チーム同士でデータ分析方法を競い合う『ダッシュボードコンテスト』にも現場が前向きに取り組み、それが管理者の人材育成にもつながっている。どこも本社や管理側の人間はデータを見たがるけれど、現場がそれを嫌がる、という固定観念が覆されました」
「三菱食品では、荷主が業務委託先の労務実態を把握するためにロジメーターが使われています。そのように荷主側のニーズで委託先の現場にロジメーターを導入するというパターンが、実は導入のきっかけとして一番多い。データは契約の妥当性を裏付けるものになるし、そのデータを基に荷主と3PLが協力して、現場に投入する人工(にんく)を適正化したり、業務量を平準化したりできる。データを挟んで話をすることでお互いの不信感や疑念が払拭されて、荷主と3PLが良い関係を築くことができると知りました」
「サンリツのケースでは、物流DXのロードマップとロジメーターの活用ステップを分かりやすく図示した資料を作り、最初に取り組みの全体像を見せることが大きな効果を発揮する、ということを学びました」
倉庫の見える化によるPDRサイクル
──当面の展開は?
「ロジメーターの運用が安定して信頼性の高いデータを取得できるようになったら、次のステップでは収集したデータを現場横断で集計して分析し、報告する段階に入ります。そこで利用する簡易BIツール『Logiscope(ロジスコープ)』を今年4月にリリースしました。ロジメーターのバージョン3を開発した時点で、大手ユーザーの本社側のニーズに対応するために計画していたサービスです」
「さらに現在、第3ステップで利用するツールとして『Logiboard(ロジボード)』の開発に取り組んでいます。現場に投入する適正な人員数と配置を、実績データとその日の作業量予測から自動計算します。勤務シフトの最適化は継続的な努力を必要とする現場改善と違って即効性があり、その効果も大きい。現在はベータ版のトライアルに入っており、来年4月のリリースを目指しています」
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