倉庫の空間利用効率アップ、将来はAGV1000台の同時制御実現目指す
シャープは11月10~12日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催した自社の先端技術などを紹介する独自イベント「SHARP Tech-Day」で、新たに開発した「ロボットストレージシステム」を初めて一般に公開した。
今回お披露目したのは、最大5.3mの高さまで専用棚にコンテナを積み上げて保管、自動搬送ロボットがコンテナを出し入れし、ピッキング作業エリアまで運ぶタイプ。倉庫スペースの上部空間を有効活用できるのがメリットだ。
同社は今後、地震が多い日本の特性に合わせて耐震性能を強化するなど、標準的なシステムの仕様を固め、物流現場へ積極的に利用を働き掛けていく構えだ。さらに、将来は超高速の計算が可能な量子コンピューターを活用し、在庫の配置を効率化するとともに、最大1000台規模の自動搬送ロボットを同時に制御できるようにすることを目指す。
お披露目したロボットストレージシステム。高所まで専用棚でコンテナを格納できる
「SHARP Tech-Day」の会場
将来は自律的に業務改善可能な環境提案も
ロボットストレージシステムはAGV(自動搬送ロボット)を活用し、入出荷を自動化する。同社が2017年に開始したロボティクス事業はこれまでに延べ150拠点に約1000台のロボットを納入してきた。ロボットストレージシステムにはそうしたソリューションの開発で蓄積してきた技術を投入している。
今年2月には、庫内を2階層以上の多階層構造にし、それぞれのフロアで商品の保管棚を持ち上げてピッキング作業エリアまで自動で運ぶGTP(Goods to Person)タイプのAGVを使ったロボットストレージシステムを発表。既に数十件の引き合いが寄せられているという。
シャープが独自に開発した集中制御システムを使うことで、最大500台までのAGVを最適に管理できると見込む。同社スマートビジネスソリューション事業本部ロボティクス事業統括部の栗本英治第一技術部長は「自動搬送ロボットは技術の進化でコモディティ化(一般化)が進み、なかなか差別化を図るのが難しくなってきている。加えてソフトウエアの部分でロボットを最適にコントロールすることが競争力の中心になってくる」と指摘する。
シャープがロボティクス事業で開発してきた多様なロボット
「SHARP Tech-Day」で公開したのは、最大5.3mの高さの専用棚の最上段まで届き、コンテナを出し入れできるAGVを活用しているタイプだ。AGVは上下に伸縮し、3.6mまで高さを自ら下げられるため、防火シャッターをくぐって移動が可能。防火区画をまたいで専用棚を並べられるため、広いフロアを効率的に使えると見込む。
1台のロボットは左右各2列、計4列の専用棚にアクセスできる上、さまざまなサイズのコンテナをつかんで出し入れさせることも可能だ。
ロボットストレージシステム稼働のイメージ(シャープ提供)
高所を生かした同様のストレージシステムは既に中国系のメーカーも展開している。栗本氏は「震度5にも対応できるよう耐震性を高めるなど、きめ細かな配慮を施し、顧客企業のニーズに対応して差別化を図っていきたい」と意気込む。
シャープはさらに、膨大な組み合わせの中から最適なものを瞬時に見つけ出す量子コンピューターの技術を活用し、庫内で出荷頻度などを考慮して最適な商品配置を迅速に判断、指示できるようにすることを想定。同時に制御できる台数も1000台まで増やしていく構想を立てている。その先には、生産ラインと連動したオンデマンド配送など、サプライチェーン全体を最適化し、自律的に業務を改善していける現場環境を提案することを視野に入れている。
(藤原秀行)