今後も食品EC市場拡大と想定、施設需要増に対応
日本GLPは11月24日、東京都内の本社で、国内の冷凍・冷蔵物流施設市場の動向に関するメディア向け説明会を開催した。
食品のEC市場は今後も着実に成長することが見込まれている一方、食品メーカーや物流事業者らにとっては地価や建設コストの上昇などで、自前で冷凍・冷蔵倉庫を開発するのが厳しくなっていると分析。同社が手掛けている、冷凍・冷蔵設備を備えた賃貸物流施設の需要獲得に強い自信を見せた。
また、今後伸びるニーズへの対応策の一環として、冷凍・冷蔵専用のマルチテナント型物流施設の提供に注力する方針を強調した。
開発実績として、賃貸済みの冷凍倉庫は6.4万坪(約31.4万t)で冷凍・冷蔵倉庫業界の8位、開発予定を含めたベースでは10.6万坪、52.0万tで5位にランクインすると推計。冷凍・冷蔵の対応可能な施設の具体的なプロジェクトとして、大阪の南港エリアや神奈川湾岸エリアなどで今後、5物件を計画していることを明らかにした。
ふるさと納税の返礼品も鍵握る
冒頭、同社の松脇隆常務執行役員営業開発部長は、活況なドライ倉庫の市場からの次の一手として、冷凍・冷蔵倉庫を位置付けていることを紹介。賃貸型の冷凍・冷蔵倉庫に関し「事業者の倉庫が満杯になると周辺の倉庫の協力を得て増やしていくという伝統がある」と指摘し、臨時の保管需要を取り込めると期待をのぞかせた。
同社営業開発部冷凍冷蔵チームの伊藤晋氏は、経済産業省の電子商取引に関する市場調査の令和3年度(2021年度)結果を引用し、食品ECの市場規模は21年が2兆5199億円で前年から1割増になっている一方、食品のEC化率は3%台にとどまっているとの推計結果を引用し、今後の伸びが見込めるとの見解を示した。
また、ふるさと納税制度で地方自治体が地域の魚介・海産物や果物、総菜などを返礼品として取り扱っていることも、冷凍・冷蔵倉庫のニーズにつながっていると解説。この2点が鍵となる要素と分析した。
土地や建築費の高騰が鮮明となり、冷凍・冷蔵倉庫は設備投資がドライ倉庫の2倍要することからも「自前で冷凍・冷蔵倉庫を建てるのはなかなか厳しい時代になってきている。バランスシート上も非常に重くなり、財務状況が悪くなる懸念がある」と分析した。
同社としてマルチ型の冷凍・冷蔵倉庫としては、小規模区画に分割可能な「流通型」、ボックス型倉庫の「保管型」、既存の常温マルチ型物件の1階に導入する「後付け型」を主に手掛けると解説。
今後の開発スケジュールに触れ、大阪府の南港エリアで地上4階建ての保管型冷凍倉庫が2026年に竣工するほか、首都圏でも川崎市川崎区に流通型の3温度帯・可変温度帯の延床面積約20万5000㎡の倉庫が26年12月末、千葉湾岸では地上4階建ての冷凍倉庫が25年6月末、同じく地上4階建ての別の冷凍倉庫が28年ごろにそれぞれ完成する見込みと述べた。このほか、既に公表している東京都昭島市の「GLP ALFALINK昭島」で、3温度帯の後付け型を設ける予定という。
デベロッパーとしても開発コストが上昇していることへの対応について問われたのに対し、松脇氏は「今後は今までのような賃料では貸し出せなくなると思う。単価が上昇していることは(荷主や物流事業者も)認めざるを得ないのではないか。徐々に受け入れられていっている」と展望した。
(藤原秀行)