織田信長の関所撤廃と物流支配【戦国ロジ其の3】【令和元年特別企画】

織田信長の関所撤廃と物流支配【戦国ロジ其の3】【令和元年特別企画】

関所の弊害

戦国時代の日本では群雄割拠していた各勢力(大名、地侍、宗教勢力など)が領内に独自の『関所』を設けて街道を封鎖して関銭(通行料)を徴収していました。

「おう、誰に断ってこの道を通ってんだ?!通行料だせや!!」

と、やっていることはチンピラのようですが、これは真っ当な税金としての側面も強いのです。

道路は放置していれば荒れてしまいますので、保守が必要になります。そのための財源になったのが関銭です。現在で言う高速道路料金や自動車関連の税金に近いものがあります。また、関所を設けるような支配者は、その領域における治安維持に責任を持つという部分もありました。

しかし、このような関所が勢力ごとに設けられて乱立すれば、少し進むたびに関銭を繰り返し徴収されてしまします。旅人や商人にはたまったものではないでしょう。移動、物流コストが高騰して人や物の動きは滞りがちになってしまいます。

このような問題は当時から広く認識されていたようで、一部の戦国大名が勢力を広げて広大な領地を治めるようになると、その領内での移動を妨げる関所は減少していくこととなります。もちろん、関銭は国人領主の重要な収入源ですので、関所の設置に制限を掛ける政策は大勢力にとっても簡単なことではありませんでした。

そんな中、この関所の撤廃を徹底した戦国大名がいました。織田信長です。

織田信長の中央集権

『桶狭間の戦い』で今川義元を討った信長は、それを機に今川から離反した徳川家康と同盟、尾張統一を進めます。

なお、信長は尾張統一までの間に
『那古屋城』⇒『清須城』⇒『小牧山城』
と本拠地を変更しています。

戦略上有利な場所を選んだということだけでなく、武田家の信虎や勝頼と同じように中央集権化をその度に推し進めていったのです。

尾張を統一すると今度は斎藤氏が治める美濃を攻め、美濃攻略が成ると本拠地を美濃の岐阜城(稲葉山城から改名)とします。

この頃から『天下布武』の朱印を使用していますので、具体的に天下の覇者となることを意識し始めていたものと考えられます。なお、当時の『天下』とは日本全国を指すこともありますが、基本的には畿内(山城、大和、摂津、和泉、河内)を指します。もしくは京だけを指す場合も。

当時の畿内の人々にしてみれば、それ以外の土地なんぞ外国同然。ただし、源頼朝は京都を支配していないどころか、関東など東国しか支配していなかった(鎌倉幕府が全国的な支配力を確立するのは頼朝死後の『承久の乱』以降)のに『天下草創』なんて言葉を使っているように、時代や主体によって意味合いが違います。

で、信長の『天下布武』は“武力をもって上洛を果たし京とその周辺を支配するぞ”もっと言えば“三好政権を打倒して中央に影響力を持つぞ”くらいの意味合いではないかと。

三好三人衆と松永久通によって殺された前将軍である足利義輝の弟、足利義昭が都合よく頼ってくると上洛戦を開始、破竹の勢いで京へ上り義昭を室町幕府15代征夷大将軍に据えます。

畿内の物流支配

大喜びの義昭は信長を『吾が父君』と呼んで斯波氏(織田家の主君筋で三管領家の一角)の家督継承と管領(あるいは副将軍)への就任を打診、しかし信長はこれを固辞し草津、大津、堺へ代官を置く(支配する)許可を求めました。

この3つの都市は当時の機内近郊における最重要商業拠点であり物流拠点と言えます。更に堺に至っては鉄砲生産を始めとした工業都市という側面も強く持っていました。

これらの都市を支配するということは、機内近郊における工業と物流の支配者となることを意味していたのです。そしてそのことをよく理解していたことこそが織田信長という人物の偉大さと言えるでしょう。

さらに同じころ、信長はもうひとつの重要な政策を実施します。それが関所の撤廃です。
先に述べたように、他の大名のなかにも関所の弊害を理解して、排除の方向で動いていた者はいましたが、徹底して領内の関所を破棄した大名は信長以前にはいませんでした。
関所を撤廃すれば、関所を設置した領主や寺社に反発を受け、短期的な税収も減ってしまうからです。

また、信長はインフラ整備にも積極的で、街道を拡張して脇道も整備。河川には橋を架け、峠の難所を掘削して新道を拓くなど投資を惜しみません。それぞれの土地を支配する領主や寺社を押さえつけ、信長が設定した統一規格の道路を引くことまでしました。

機内の物流を支配下に置き、さらに自らの領地における物流の円滑化。軍事的な兵站という次元だけではなく、国家レベルにおけるロジスティクスの構造改革です。そしてそれを可能にした強大な権力は中央集権化の結果です。

この後の織田軍は他家とは一線を隔すレベルの動員能力と機動力を発揮し、乱世に猛威を奮うこととなります。

(芳士戸亮)

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